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【国際】WRI、下流サプライチェーンでの水目標設定でP&G事例解説。自然資本とも関連

 国際資源研究所(WRI)は10月20日、下流サプライチェーンでの水資源目標に関するP&Gの事例を発表した。同事例では、WRIも目標設定手法の開発に協力している。

 世界の淡水取水量の13%は生活用水となっており、国内の水需要は過去50年間で600%増加する中、生活用水の増加速度は、農業用水や工業用水を遥かに上回る規模となっている。今後の見通しでは、水需要は56%増加するとみられており、それに伴い生活用水の削減も喫緊の課題となってきている。

 一方、科学的根拠に基づく環境目標策定イニシアチブScience Based Targets Network(SBTN)は5月、淡水に関する科学的根拠に基づく目標設定ガイダンスを発表しているが、第1弾のリリースでは下流サプライチェーンは対象から除外されており、今後の策定として位置づけられている。そこでWRIは、先行して、下流サプライチェーンの目標設定手法の検討を進めている形。

【参考】【国際】SBTN、SBTs for Natureのメソドロジー発表。まず17社が実証。2024年から全面展開(2023年5月24日)

 WRIは、水ストレス(流域における再生可能な水供給力に対する水需要の割合)の増大は、企業財務にも影響を与えることを紹介した。ユニリーバは2016年、CDPに対し、ブラジルの2015年の旱魃により、サンパウロの消費者がシャワーや洗濯の頻度を減らしたと報告。この行動変化によって、消費財の売上が減少している。2017年の世界銀行の報告書では、業種毎に影響は異なるが、断水は8.7%から34.8%の売上減少につながると推定している。

 P&Gのバリューチェーンにおける取水量では、原材料生産が3%、直接事業1%、消費者使用96%で、圧倒的多数を下流サプライチェーンが占めている。P&GとWRIが開発した目標設定手法では、消費者の水使用による影響をモデル化し、同社の市場・出荷データ、消費者習慣に関する調査、公表文献を組み合わせて、14の製品カテゴリーにおけるP&Gの消費者の水使用量を推定した。その中では、蒸発水や屋内漏水による損失水も考慮した。

 その上で、目標設定の対象とする流域では、同社の製造ポートフォリオと主要消費者市場を、WRIの水リスク分析ツール「Aqueduct」と照らし合わせて優先順位を決定した。さらに、WRIはP&Gのためにリスクアセスメントを実施し、主要施設と消費者市場が慢性的に高い水ストレスにさらされている流域をマッピングしました。このプロセスを通じ、7カ国にまたがる18の優先流域が特定され、最終的に18流域の総水量の半分以上を占める2つの流域を目標設定対象として選定した。

 実際に設定した目標では、メキシコシティを囲むモクテスマ流域と、米ロサンゼルス市の大部分を含むカレグアス流域の2つで、2030年までに自社製品の使用で消費される水の110%を再生することを目指している。両流域は、各々人口2,300万人以上、1,200万人以上の密集した都市部をカバーしており、再生することで、同地域の水安全保障を向上させる。

 WRIは今回、下流サプライチェーンでの有効な対策として3つを紹介した。まず流域の水資源対策。地下水の涵養量を増やすための湿地帯の造成や保護、農業用水の使用量を減らすための灌漑システムの改善、漏水を特定して止めるための公共配水システムへのセンサーの設置等が該当する。

 次に、製品使用時に水消費量を減らすため、洗髪、食器洗い、床拭き、洗濯等、個人の衛生や清掃に使用する水消費量を削減できる商品の開発。3つ目が、消費者教育キャンペーンで、必要量以上の水を使用しないよう呼びかけるというもの。

【参照ページ】The Next Phase of Corporate Sustainability: Addressing Consumer Water Use

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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