EUの欧州証券市場監督局(ESMA)は10月6日、サステナブルボンド(ESG債)のグリーニアムに関する調査結果を発表した。
今回の論文は、グリームニアムに関する市場関係者の共通認識を構築し、金融安定化と投資家保護を狙ったもの。サステナブルボンドの発行は、欧州経済地域(EEA)域内だけで、2018年上半期以降で663%増、2023年上半期だけでも昨対比で28%増加。価格の大幅な歪みは、ボラティリティの上昇や資産価格の急速な下落を引き起こす可能性があるため、価格形成の状況を分析した。
同調査では、欧州経済地域(EEA)域内の発行体による合計8,696件の債券を対象としている。発行額では総額37億ユーロ。また従来はグリーニアム分析では、グリーンボンド及び関連のサステナビリティボンドだけが対象だったが、今回はソーシャルボンドやサステナビリティ・リンクボンドでの効果も対象とした。発行体も、国債、地方債、機関債、社債、金融機関債等を全て対象とした。
複数の重回帰分析の結果は、2023年3月時点では、決定係数が0.44から0.6の間で、統計的に確かなグリーニアム効果の発生は確認できなかった。但し、他の論文での分析結果も踏まえ、過去のESG債の発行実績のある発行体は、グリーニアムが発生している可能性があるとした。要因としては、発行回数を重ね、経験値が上がることで、投資家の中で投資しようという動きがあることや、サステナブルボンド全体の発行件数が増えるにつれグリーンウォッシュの懸念も高まり、先行して発行している発行体に対する信頼が高まっていることなどが考えられるとした。
また、サステナビリティ・リンクボンドに関しては、グリーニアムが発生している傾向があるものの、2021年時点のサンプル数が少ないことや、比較的新しいサステナビリティ・リンクボンドへの関心が一時的に投資家の間で高まった等も考えられ、断言は避けた。
ESMAは、純粋な金融安定の観点から、サステナブルボンドでの価格決定メカニズムが従来の債券と大きく異なるものに少なくとも現状はなっていないことは、従来の金融政策が通用するというと言えるため望ましいことと評価。一方、持続可能な経済に転換するという観点からは、サステナブルボンドへの投資欲が低いことは、それはそれで問題との立場も示し、今後どのような状況になれば、投資家の意欲を喚起できるかを研究していく必要があるとした。
またESMAは、今回の調査のサンプル数が限られていることや、サステナブルボンド市場の状況も変化していくことから、今回の調査結果から、サステナブルボンドでのグリーニアムの発生を一般的に否定するように結論づけてはいけないとも付言した。
【参照ページ】ESMA provides analysis on issuers’ potential benefits from an ESG pricing effect
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