国連責任銀行原則(PRB)が9月21日、発足から4周年を迎え、2年毎に発行される進捗報告書の第2回目を発行した。PRB加盟銀行は80カ国325社にまで伸長。資産ベースで世界の銀行業界全体の約50%を占めるまでになった。
現在の日本の署名機関は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、みずほフィナンシャルグループ、三井住友トラスト・ホールディングス(SMTH)、農林中央金庫、SBI新生銀行、滋賀銀行、九州フィナンシャルグループ、野村ホールディングスの9社。
PRBの署名機関のうち、2050年までの投融資ポートフォリオのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にコミットする銀行のイニシアチブ「Net-Zero Banking Alliance(NZBA)」に加盟しているのは104社。PRB生物多様性コミュニティに参加している銀行も300社を超える。自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)パイロット・プログラムへの参加銀行は39社。
社会観点では、「PRB金融健全性・インクルージョン・コミットメント」への署名機関は33社。そのうち20社はすでに目標設定まで終えている。日本の銀行の署名はゼロ。
【参考】【国際】PRB、金融健全性・インクルージョンで目標設定ガイダンス第2版発行。31社署名(2022年10月26日)
PRBの署名機関のうち、国連持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定等と整合する戦略を公表している企業が94%。一つ以上のインパクト目標を掲げている企業が77%、2つ以上掲げている企業も38%にまで到達した。目標設定の分野では、気候変動緩和が200社、次に金融健全性・インクルージョンが80社弱、経済の健全性・インクルージョンが40社弱、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)が20社弱の順。
気候変動に関しては、ファイナンスド・エミッション(融資ポートフォリオのカーボンフットプリント)を算出している企業が68%、そのうち70%がPCAFを用いた算定をしていた。地域別のファイナンスド・エミッション算定状況では、北米が最多で89%。欧州は74%。最少はアフリカ・中東の33%だった。特に発展途上国の署名機関で算定に課題を抱えている。
今回の進捗報告書では、目標設定についてのガイドを掲載。設定に向けた5つのステップを紹介するとともに、分野別に実効性のある目標の観点を示した。具体的には、気候変動緩和、金融健全性・インクルージョン、自然、省資源・サーキュラーエコノミー及び、目標達成のためのアクションの在り方についてもベストプラクティスを示した。加えて、実社会へのインパクトとして、農業セクターと、金融健全性・インクルージョンでのモデルを示した。
金融商品では、融資分野では、グリーンレンディングが51%、ソーシャルレンディングが28%、双方合わせたサステナビリティ・レンディングが21%。投資商品では、グリーン投資商品が48%、ソーシャル投資商品が9%、サステナビリティ投資商品が43%だった。そのうちPRB署名機関のうち、59%が商品での目標を設定していた。G-SIB指定銀行16社では、サステナブルファイナンスの目標総計が7兆米ドル(約1,000兆円)にも達した。
ガバナンスでは、自組織でのサステナビリティに関するガバナンスを整備した企業が98%。資産1兆米ドル以上の大手署名銀行では取締役会レベルでのガバナンスを整備した企業が96%へと非常に高かった。但し、目標と報酬を連動させている銀行は38%にとどまった。
PRBは今回、次回の進捗報告書に向けた内容も紹介。ポートフォリオ構成比や資金フロー、顧客エンゲージメント、アドボカシー活動、社内方針整備について、チェックしていく考えを示した。また、自然と気候変動への適応に関する新たなガイダンスを、2023年第4四半期に発表することも伝えた。
【参照ページ】Principles for Responsible Banking celebrates fourth anniversary with release of progress report
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