国際エネルギー機関(IEA)は9月28日、「第1回IEA重要鉱物&クリーンエネルギー・サミット」を開催。政府だけでなく、企業、金融機関、NGOからも関係者をマルチステークホルダー型の初会合を開催した。
同サミットに政府から出席したのは、米国、カナダ、英国、EU、日本、韓国、オーストラリア、インド、ブラジル、チリ、アルゼンチン、カザフスタン、モンゴル、コンゴ民主共和国等。日本からは西村康稔経済産業相と高村正大外務大臣政務官が出席した。エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)も出席した。
企業から出席したのは、BHP、グレンコア、アングロ・アメリカン、リオ・ティント、トラフィグラ、ユミコア、South32、高麗亜鉛、ステランティス、三井物産、日立エナジー、ロンドン金属取引所、ナティクシス、BMOキャピタル・マーケッツ等から、CEO級が出席した。中国からは参加していない。
今回のサミットは、2022年に開催されたIEAの加盟国閣僚級が集う理事会で、関係者からの提言をまとめるよう指示されていたことによるもの。IEAは同時に事務局内に、「エネルギー安全保障・重要鉱物部門」を新設する調整も進めている。
IEAは7月、資源を巡る最新動向をまとめた「重要鉱物レビュー2023」を発行。再生可能エネルギーやバッテリー需要の拡大を受け、2017年から2022年までに、リチウム需要は3倍、コバルト需要は70%増、ニッケル需要は40%増となり、エネルギー・トランジション鉱物の市場は、2022年には3,200億米ドルにまで拡大したと伝えている。重要鉱物開発への投資は、2021年に20%増、2023年に30%増と、こちらも急増している。
同報告書によると、世界中で計画されている重要鉱物のプロジェクトがすべて実現すれば、各国政府が発表した気候変動に関する国別削減目標(NDC)の達成に必要な十分な供給量を確保できるという。しかし、プロジェクトの遅れや技術的な不足のリスクも抱えており、安泰とはいかない。さらに、1.5℃目標を実現するには、現状計画よりさらに多くのプロジェクトが必要になる。また、2022年の重要鉱物生産国の上位3ヶ国のシェアは、横ばいもしくは上昇傾向にあり、安全保障リスク上の懸念も生まれている。ESG視点から地域住民等とのエンゲージメントの課題もある。
そこで、同サミットは、6つの重要アクションをとりまとめた。
- 鉱物の多様な供給への進展を加速する
- 加工技術とリサイクル技術を向上する:資源効率強化とサーキュラーエコノミー化
- 市場の透明性を促進する:デューデリジェンスとトレーサビリティの強化
- 信頼できる情報提供を強化する:IEAを中心とした市場データの整備
- 持続可能で責任ある慣行へのインセンティブを創出する:ESGに関する政策ガイダンス策定
- 国際協力を促進する:一部の国や企業だけでなく、幅広いステークホルダーでの強力関係構築
IEAは、2024年2月に閣僚会議を開催する予定。その場で、IEA自主的重要鉱物安全保障プログラムの次のステップも発表する考え。
IEAは5月、再生可能エネルギーやバッテリーの設備コストの動向を指数化した「IEAクリーンエネルギー設備価格インデックス」を発表。世界全体の価格動向を指数化して表現している。同指数は2014年から60%減少し、急速にコスト競争力があがっていたが、2021年頃からやや上昇に転じ、関係者を危惧させていた。背景には、重要鉱物の投入コストの高騰や、サプライチェーンの混乱、化石燃料価格の上昇等が挙げられていた。一方、2023年からは再び減少に転じており、設備導入が大幅に増加する期待ことへの高まっている。
同指数の構成比は、太陽光発電モジュール価格が48%、風量発電タービンが36%、EVバッテリーが13%、蓄電発電所バッテリーが3%。
【参照ページ】IEA Critical Minerals and Clean Energy Summit delivers six key actions for secure, sustainable and responsible supply chains
【参照ページ】Critical minerals market sees unprecedented growth as clean energy demand drives strong increase in investment
【参照ページ】A new tool to track transitions: the IEA clean energy equipment price index
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