気候変動に関する金融リスクを検討するための中央銀行・金融当局ネットワーク「気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(Network for Greening the Financial System;NGFS)」は9月1日、気候変動訴訟に関する報告書を2本発表した。中央銀行と各国の金融監督当局に対し、金融機関における気候変動訴訟リスクを評価・管理する能力を高める必要があると促した。
1つ目の報告書は、気候変動訴訟の最新動向調査。NGFSは2021年に報告書「気候関連訴訟:増大するリスク要因についての認識向上」を発表しており、今回の報告書は、前回の報告書以降の最新動向をアップデートしたものとなっている。国連環境計画(UNEP)も別途、気候変動訴訟の報告書を発行している。
【参考】【国際】UNEP、気候変動訴訟動向報告書2023発行。訴訟件数増加。新たな潮流も(2023年8月22日)
同報告書は、世界の気候変動訴訟の件数が、2021年に253件、2022年に223件、2023年は7月までで84件発生しており、近年では訴訟内容が多様化。さらに訴訟発生国も拡大していると伝えた。同報告書は、被告を、政府・公的機関、事業会社、金融機関の3つにわけ、動向を解説した。
訴訟の拡大を受け、NGFSは今回、各訴訟は、金融セクターに重大な影響を与える可能性があり、中央銀行と金融監督当局が監視と監督上の期待を強化することが必要と指摘。特に、2023年にはフランスでBNPパリバに対する訴訟が発生しており、銀行が直接被告になる状況になっていることも強調した。
2つ目の報告書は、「気候変動訴訟リスクのミクロプルーデンス監督」に関する影響を記したもの。気候変動訴訟リスクに関するミクロプルーデンス監督のための潜在的なオプションを提示し、監督当局が、監督の優先順位をより明確にするために、リスクベースのアプローチを採用することを提案した。また、気候変動訴訟リスクは、管轄地域、政治環境、訴訟の種類や規模によって多様性が高いため、監督当局が将来の気候変動訴訟リスクの推移を信頼できる形で推定・予測することは困難としつつ、監督当局は、当該リスクに関する方法論と評価を引き続き模索し、強化すべきとした。
気候変動訴訟が引き起こすミクロプルーデンスリスクとしては、金融機関にとっての損害賠償、罰金、弁護士費用、管理費等の直接的コスト、保険金支払、信用損失、事業への悪影響等の間接的コストの双方があり、リスク要因、伝達経路、エクスポージャを特定する必要があるとした。
【参照ページ】NGFS publishes two complementary reports on climate-related litigation risks
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