BRICS5ヶ国は8月22日から24日、南アフリカのヨハネスブルクで第15回BRICSサミットを開催。中国の習近平国家主席、インドのナレンドラ・モディ首相、ブラジルのルラ・ダ・シルバ大統領、南アフリカのシリル・ラマフォサ大統領、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が出席した。ロシア政府は当初はプーチン大統領が参加する予定だったが、ウクライナ戦争で国際刑事裁判所の検事から拘束されることをおそれ、自らは出席しなかった。
BRICSサミットは、2009年に中国、インド、ロシア、ブラジルの4ヶ国でスタート。2010年に南アフリカが加盟し5ヶ国体制となった。今回のサミットでは、2024年1月から新メンバー国として、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6ヶ国の加盟が決まり、11ヶ国体制になる。このうちエジプト、エチオピア、イラン、UAEは非G20国であり、主要国の国際会合メンバーを初めて形成することになる。
今回の新規加盟では、事前に40ヶ国以上が加盟に関心を示し、23ヶ国が正式に申請した。今回加盟を果たせなかった国は、タイ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、バーレーン、クウェート、パレスチナ、モロッコ、アルジェリア、ナイジェリア、セネガル、カザフスタン、ベラルーシ、ボリビア、ベネズエラ、ホンジュラス、キューバ。G7以外のG20で申請しなかったのは、韓国、オーストラリア、メキシコ、トルコ。
新規加盟に関しては、指導原則、基準、手順に基づいて決定したとしつつ、詳細は明らかにしていない。また今後も加盟国を拡大していく意思も示した。加盟国以外にもサミットや会合に招待し、BRICSのネットワークも広げていく考えも表明した。
今回の第15回サミットのテーマは「BRICSとアフリカ」。最終日に「ヨハネスブルク第2宣言」を採択した。国連憲章で掲げられている目的と原則を含む国際法の支持を改めて表明すると同時に、「国連憲章の原則と相容れず、特に発展途上国において悪影響をもたらす、一方的な強制措置の使用に懸念を表明する」とし、先進国への反発もみせた。
そのため、国際機関での新興国や発展途上国の重要ポストを求めるとともに、国際機関で新興国及び発展途上国の女性の比率を増やすことも求めた。民主主義の観点から、国家レベルでも相互尊重されることを要求した。安全保障理事会に発展途上国の理事国を入れることも求めた。
通商政策では、世界貿易機関(WTO)を中核とする、開かれた、透明で、公正で、予測可能で、包摂的で、衡平で、非差別的で、ルールに基づく多角的貿易システムを支持することを再確認。現在機能不全に陥っている紛争解決機関についても、第二審となる上級委員会委員を2024年までに選定すべきとした。
農業政策では、公正で市場志向の農業貿易システムの達成、飢餓ゼロ、食料安全保障と栄養改善の達成、持続可能な農業と食料システムの促進、レジリエンスのある農業慣行の実施を提唱。WTOの「農業に関する協定」第20条の規定に従い、農業改革を実現する必要性を強調するとともに、食料安全保障目的のための公的保有(PSH)に関する恒久的解決策や、後発発展途上国を含む途上国のための特別セーフガードメカニズム(SSM)に関するルールを尊重するよう求めた。
国際金融政策では、国際通貨基金(IMF)のクォータ(出資割当額)に関し、新興国や発展途上国の比率を上げるよう要求。欧米が支配しているブレントンウッズ体制の改革を求めた。
軍事関係では、生物兵器禁止条約及び化学兵器禁止条約を含む軍縮・不拡散の強化を求めた。中国とインドがすでに核保有国であることに鑑みてか、核軍縮については触れなかった。イランの核問題に関しては、国際法に則り、平和的かつ外交的な手段により解決する必要性があるとした。宇宙における軍拡競争( PAROS)及びその兵器化を防止することへの支持も再確認した。
ICT(情報通信技術)では、ICTが成長と発展のための強大な可能性を強調する一方、ICTが犯罪活動や脅威に対してもたらす既存及び新たな可能性を認識。犯罪悪用のレベル及び複雑性の増大に対する懸念を表明した。オープン、安全、安定的、アクセス可能かつ平和的なICT環境の促進に対するコミットメントを再確認した。
相互成長のためのパートナーシップでは、国際金融機関に、経済の混乱や金融の分断等に対するシステミックリスク防止の役割を期待。また、地政学的・地理経済的な分断から生じるリスクを抑制し、グローバルイシューを前に多国間協力が不可欠と伝えた。さらに、現在のBRICS5ヶ国が世界食料生産の3分の1を担っていることを認識し、BRICS内及び世界の食料安全保障を強化するため、農業協力強化と持続可能な農業・農村開発を促進する必要があることも再確認した。そのため、水や肥料等の農業投入物の着実なアクセスを促進することも重要とした。
人権については、「人権を促進し、保護し、実現する必要性を考慮」としつつ、各論にはあまり踏み込まなかった。児童労働については、ダーバン行動に基づき、効果的に廃止するための努力を強化するとしたが、「強制労働」や結社の自由には言及しなかった。
環境関連では、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)とパリ協定、また生物多様性条約(CBD)や昆明・モントリオール生物多様性枠組み、ワシントン条約、国連砂漠化防止条約(UNCCD)、土地劣化の削減と陸域生息地の保全強化に関するグローバル・イニシアチブを促進していくことを確認した。ロス&ダメージ基金を含めた先進国から発展途上国への資金支援、さらには技術移転を強化することも求めた。気候変動対策では、UNFCCCで掲げられている「共通だが差異ある責任および各自の能力(CBDR&RC)原則」を重視し、国ごとに定義された開発の優先順位に基づいた、公正で公平かつ持続可能な移行を提唱した。
環境と通商の関係では、CBDR&RC原則に基づき、気候変動及び生物多様性の喪失に取り組むためにとられる措置は、WTOルールと整合的でなければならず、恣意的又は不当な差別の手段や、国際貿易に対する偽装された制限を構成してはならず、国際貿易に不必要な障害を生じさせてはならないと強調した。
エネルギー政策では、バイオ燃料を含む再生可能エネルギー、水力発電、化石燃料、原子力エネルギー、ゼロエミッションもしくは低排出で生産される水素が、エネルギー安全保障上も重要としつつ、エネルギー安全保障とエネルギー転換を支える化石燃料の役割を認識するとした。
教育では、BRICSネットワーク大学の加盟校を拡大する「BRICSネットワーク大学国際運営委員会」の検討を支持した。
BRICSサミットは、2024年の第16回会合をロシアのカザン市で開催する。
【参照ページ】Johannesburg II Declaration
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