米ESG投資推進NGOのCeresは7月17日、食品・アパレル・農機大手10社とともに、連邦上院・下院の双方の農業委員会に対し、米農務省(USDA)自然資源保全局(NRCS)が農家向けに提供するプログラムや補助金の利便性を向上するよう求める共同書簡を送付した。特に「技術支援(TA)提供者」の認定の大幅増を求めた。
今回共同書簡に署名したのは、ペプシコ、マース、シエラネバダ、アイリーン・フィッシャー、インディゴ・エッグ、ニュー・ベルギー・ブリューイング、ソレクトラック、ストーニーフィールド・オーガニック、ボンテラ・オーガニック・エステート、ブラウン・ファミリー・ファーム&プロデュース、ソレクトラックの10社。リジェネラティブ農業推進団体Kiss the GroundとEvangelical Environmental Network(EEN)も署名した。
今回の政策アドボカシーのターゲットは、連邦両院が5年毎に制定する「農業法」。目下、「2023年農業法案」の制定作業が進められており、Ceresらは、新たな農業法の中に、気候スマート農業への支援策を盛り込ませる作戦に出ている。
今回の書簡では、現行の自然資源保全局(NRCS)のプログラムは、1930年代に北米の大草原の生態系に大打撃を与えた巨大な砂嵐時代「ダストボウル」から持続可能な農業促進の柱になっているが、申請手続きが煩雑であることや、技術支援ラインナップが不十分なことから、現在の需要に応えられていないと指摘特に小規模農家への支援が手薄になっていると主張した。
そこで技術支援を近代化すべきと要請。農家の現在の需要に合致した全プロバイダーの基準を作成し、技術支援(TA)提供者を第三者認定する仕組みを構築。プログラムの作成と実行に必要な人員を確保するよう促した。特に気候スマート農業が農家支援の新たなスキルセットであり、水、気候、生物多様性に同時に利益をもたらすシステムを特定し、実施支援すべきとした。必要な認証としては、アグロフォレストリーや輪換放牧に言及した。
また、農法の伝道師となる技術支援提供者として、経験豊富な農家、大学、農学の専門家個人・団体の他、バイデン政権が生物多様性政策の柱の一つとして打ち出した若年層を自然保護区職員として採用する「市民気候部隊(Civilian Climate Corps)」の4つを含めるよう提言。特に、成功した農家が他の農家に知見を共有するインセンティブとして、報奨金制度を設けることも要請した。
さらに各農家が技術支援提供者にアクセスできるよう、NRCSがウェブサイトを改訂し、様々なプログラムを事例やROI(投資収益率)の観点から比較できるようにすべきとも提言した。また問い合わせ窓口やヘルプデスクを設け、具体的な情報ニーズにも応えられるよう求めた。
さらに、社会的支援が必要な零細農家や、BIPOC(黒人、先住民、有色人種)農家向けには、特別に設計された教育プログラムを提供することも要請した。
Ceresは2021年に「気候スマート農業と健全な土壌ワーキンググループ」を発足。農業分野での政府へのアドボカシーを強化している。すでにインフレ抑制法で、技術支援認定の対象を民間団体や非連邦組織にまで拡大する成果を勝ち取っている。
【参照ページ】Leading companies urge Congress to help more farmers access conservation programs in Farm Bill
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