自然資本観点でのリスク・機会の情報開示を検討する自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は8月11日、自然資本を評価するデータセットの動向を調査したレポートを発表した。現状を分析するとともに、民間企業がデータ提供者の役割を果たしてきていることに大きな期待感を示した。
今回のレポートは、今後、政府、企業、金融機関、NGOにとって重要となる自然資本関連のデータの利用可能性や品質、一貫性、アクセス可能性の状況を把握するために作成された。プロジェクトは、TNFDが主導し、国際団体が集うグローバル・コモンズ・アライアンスの「アカウンタビリティ・アクセラレーター(GCAA)」が協力。国際自然資本ファイナンス促進団体NatureFinanceと、コンサルティングSystemiqが、調査とプロジェクト管理をサポートした。
情報を提供したのは、資本連合(Capitals Coalition)、CDP、GRI、生物多様性グローバル情報ファシリティ(GBIF)、オープンアース財団、MRVコレクティブ、科学的根拠に基づく目標ネットワーク(SBTN)、国連環境計画世界自然保護モニタリングセンター(UNEP-WCMC)。
同レポートは、TNFDを含め、今後の自然資本マネジメント強化していくためには、膨大なデータ必要になるものの、現在入手可能なものは断片的なものであったり、一貫性が欠けていたりと、使い勝手が非常に悪いと認識。また、一部の企業や金融機関は、多大な投資を独自に行い、自然関連データ収集・分析を行っているが、取得された高品質なデータは、公開データにはなっていないため、アクセスの観点で問題があると指摘。一般的に企業は、自社が直接管理している地域のデータを収集できていない状態とした。政府等の公共機関のデータも、有料課金になっていたりと、公共財にはなりえていない状況。
その中で、人工衛星データやeDNAデータ等まで、自然資本関連のデータ提供者として、企業が急速に台頭しつつあり、今後は政府等が情報基盤を整備するより、企業によるデータ市場化に期待したい意向を示した。しかし、オープンアクセスを実現するためのインセンティブ付や、データの一貫性や比較可能性を確保するための標準プロトコルが整備されていない現状のまま放置すれば、「市場の失敗」に陥る危険があるとした。
そこで、政府、科学者、企業、NGOの各アクターの協調行動が重要となり、特に、標準プロトコルの策定や、オープンアクセスを実現すべきデータ種別の特定、データアクセスのためのデータベースインフラ、データ収集のインセンティブ設計が特に重要になるとした。データ主権に関する懸念やリスクを早めに対処し、取引コストを下げる努力も欠かせないことにも触れた。
TNFDは今回、気候変動の分野で、二酸化炭素排出量の算定手法とデータが比較的一貫性を持って把握できているのとは異なり、自然資本の分野ではデータ整備から手掛けていかなければならないという点をあらためて認識した形。TNFDは今後、データベースの在り方についての検討をさらに進め、提言していく考え。
TNFDは、データベースの在り方について、集中管理的なデータベースだけでなく、データベース一覧リストや、分散型データベース・エコシステムについても視野に入れている。
【参照ページ】TNFD publishes scoping study exploring global nature-related public data facility
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