国際エネルギー機関(IEA)は7月11日、2017年から2022年までの過去5年間の重要鉱物市場を分析した初の報告書を発表した。再生可能エネルギー移行に必要な重要鉱物の市場規模は過去5年間で倍増した。
同報告書は、2017年から2022年までの5年間の重要鉱物市場を分析したもの。再生可能エネルギー技術による大幅な需要増加の影響で、過去5年間でリチウムの全体需要は3倍、コバルトは70%増、ニッケルは40%増となった。総需要に占める再生可能エネルギー用途の割合は、2017年から2022年にかけて、リチウムは30%から56%に、コバルトは17%から40%に、ニッケルは6%から16%に増加した。
(出所)IEA
エネルギー移行に関する鉱物の市場規模は2022年に3,200億米ドル(約44兆円)となり、重要鉱物の開発への投資は、2021年は前年比20%増、2022年は前年比30%増と増加傾向にある。最も成長したのはリチウムへの投資であり前年比50%増だった。国別では、中国企業は2022年の投資額を倍増。カナダとオーストラリアの資源採掘への投資額も前年比40%以上。
(出所)IEA
同報告書では、世界中で計画されている重要鉱物の採掘プロジェクトがすべて実現すれば、各国政府が発表した気候変動に関する公約を実現するだけの供給量を確保することができると報告。しかし、プロジェクトの遅延や技術的な不足のリスクがあり、1.5℃シナリオを実現するためには2030年までにさらに多くのプロジェクトが必要になるとした。
供給体制の寡占化も大きな懸念事項として指摘。新規プロジェクトの大部分は既に生産を支配している一部の国で発表されており、2022年の重要鉱物産出国の上位3位のシェアは3年前と比較して同程度か増加傾向にある。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)も2023年7月、重要鉱物の寡占化が進むことに対して警鐘を鳴らしていた。
【参考】【国際】IRENA、エネルギー転換に必要な重要鉱物の地政学リスクで報告書。サプライチェーン多様化(2023年7月15日)
(出所)IEA
採掘プロジェクトにおける地域コミュニティへの投資、労働者の安全確保、ジェンダーへの配慮等のESG分野の実践は前進しているが、鉱物の生産量1t当たりの二酸化炭素排出量は削減されておらず、取水量は2018年から2021年にかけてほぼ倍増した。
IEAは重要鉱物に関する需要の予測データが閲覧できるオンラインツールの初期バージョンもリリース。現在の政策シナリオ、公約シナリオ、1.5℃シナリオの3つのシナリオに対し、36の重要鉱物別、6つの技術別に需要量が閲覧できる。特に、コバルト、銅、リチウム、ニッケル、レアアース類の5つの鉱物は総需要データが掲載されている。今後供給サイドの情報を追加する等のアップデートを行っていく考え。
(出所)IEA
また、IEAは9月28日に世界の再生可能エネルギー移行に必要な重要鉱物の持続可能な責任ある供給を促進するための方策に焦点を当てた重要鉱物・クリーンエネルギーサミットを初めて開催する予定。政府、企業、その他のステークホルダー同士のコラボレーションを加速させることが狙い。
【参照ページ】Critical minerals market sees unprecedented growth as clean energy demand drives strong increase in investment
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