米ESG投資推進NGOのCeresと米カリフォルニア州保険局は7月25日、米保険大手の気候変動リスクマネジメントに関する分析結果を発表した。全米の保険会社の気候変動リスクを包括的に分析したのは今回が初となる。
今回のレポートは、15州の保険当局が2022年に実施した「気候リスク開示調査」の回答結果を分析したもの。同調査は、全米保険監督者協会(NAIC)が気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)フレームワークに基づき設問を設計し、自発的に15州が、生命保険会社と損害保険会社双方に対し、同調査を実施した。回答は、米保険業界シェア80%を超える合計1,500社以上が回答。そのうち大手約400社の回答をCeresとカリフォルニア州保険局が分析した。
分析内容は2つ。まず、カリフォルニア州保険局は、スペインの国立銀行であるスペイン銀行の研究者が開発したパイソン言語のテキストマイニングを実施。もう一つは、Ceresが、カナダの気候変動リスク分析ツール開発Manifest Climateに依頼し、機械学習アルゴリズムを用いてTCFDとの整合性を測定した。
TCFDに基づく開示では、大手494社のうち、全11項目を開示した企業が13%、10項目開示した企業も10%あった。6項目以上開示した企業は78%にも上り、米保険大手の中で、TCFDに基づく体制整備や検討が進んでいることがわかった。特に戦略とリスクマネジメントの項目で回答率が95%以上と高かった。
傾向としては、リスクマネジメントでは、統合リスクマネジメント(ERM)の中に気候変動リスクが組み込まれてきており、機会側では、再生可能エネルギー、異常気象、疾病パターンの変化、二酸化炭素排出量削減に関する保険商品を展開してきていることがわかった。
シナリオ分析を実施している企業は約20%だが、ほとんどの企業が詳細を開示していない。2℃未満シナリオを活用したと言及した企業は約5%、2℃以上のシナリオを活用したと言及した企業約3%で、また双方のシナリオを活用したと言及した企業も約3%あった。
指標と目標の開示は約40%にとどまった。スコープ3排出量の開示も12%のみだった。特に損害保険側が、保険カーボンフットプリントの算出することに手こずっている模様。
【参照ページ】Climate Risk Management in the U.S. Insurance Sector
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