世界保健機関(WHO)は7月3日、各国政府当局に対し、子供向け食品マーケティングでの栄養規制・政策導入ガイダンスを発表した。栄養観点のESGの議論が進展してきた。
今回のガイダンスは、2009年の政策レビューにより、子供向けの食品マーケティングにより、カロリー、脂肪、食塩、糖質が高い食品の消費パターンが促されていることが判明した懸念を踏まえたもの。WHOは、2010年の第63回世界保健総会(WHA)で、「子どもに対する食品および非アルコール飲料のマーケティングに関する勧告」を全会一致で採択している。
今回のガイダンス「食品マーケティングの有害影響から子供保護するための方針:WHOガイドライン」は、企業の食品マーケティングを規制するための政策の考え方を提示した。
まず、子供の健康課題として、現在世界で約4,100万人の子供が過体重や肥満の状態にあり、2000年以降11%も増えたと指摘。このままのペースでは2025年までに7,000万人に達するとした。その半数がアジアにいる。アフリカでも2000年以降50%増えており、発展途上国と先進国の比較では、発展途上国のほうが30%も悪化が速い。これらの状況は、生活習慣病につながり、社会の経済コストに直結。生活習慣病により経済損失は2025年までに7兆米ドルとなり、年間で5,000億米ドル、GDPの4%を占めるまでに状態になると警鐘を鳴らした。
対策としては、栄養プロファイリング・モデル(NPM)の活用が有効とした。政府に対しては、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、遊離糖、食塩の観点から、政府主導でNPMを整備し、健康的な食品を定義することを勧告。NPMを用いてマーケティングを制限すべき食品を分類するよう要請した。
マーケティングの制限の方向性では、「エクスポージャー」と「パワー」の双方を対象とすべきとした。エクスポージャーは、宣伝・販促等のリーチ数や頻度を、パワーは、宣伝キャラクター、インフルエンサー、ゲーム等のマーケティングの説得力を指す。また、一つのマーケティングを規制することで、他のメディア等にマーケティングの場が移る「マーケティング・マイグレーション」のリスクも最小化すべきとした。
同様の分野では、国連児童基金は2018年に「子供の権利を基準とした食品マーケティングに対するアプローチ:政策意思決定者向けガイド」を発行。WHOとUNICEFは相互に連携をとりあっている。
【参考】【国際】ATNI、NPMフレームワーク策定プロジェクト発足。WBCSDが支援。栄養分野のESG(2023年6月10日)
【参照ページ】WHO and UNICEF release toolkit to help countries protect children from harmful food marketing
【参照ページ】Policies to protect children from the harmful impact of food marketing: WHO guideline
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