国際労働機関(ILO)、世界銀行、国連教育科学文化機関(UNESCO)は7月12日、発展途上国における技能・職業教育訓練(TVET)システムの課題を分析した報告書を発表。提供されている職業教育は、実態の需要にマッチしておらず、改革が急務と指摘した。
発展途上国では現在、若年失業率が高く、2022年時点で16%。世界全体の平均を大きく上回っている。教育・雇用・訓練を受けていない「NEET」比率は約25%で、若年女性ではその割合は3分の1にまで上昇すると言われている。
さらに今後課題は加速し、同報告書では、この先20年間で、発展途上国では人口増加と、初等教育(小学校)の修了率上昇が重なり、中等教育(中学校と高校)の生徒数が飛躍的に増加すると予測されている。例えば、ブルンジ、リベリア、マリ、モザンビーク、セネガル、タンザニア、ウガンダでは、中等教育修了者の数は4倍以上になると予 想され、スーダンとニジェールでは、各々6倍と10倍になると予想されている。さらに新型コロナウイルス・パンデミックで、就業の中断を余儀なくされた人たちへの対応の必要性も増すとみられている。
しかし、中等教育を高等教育(大学・大学院)への進学課程ではなく、中卒・高卒で就労する人に向けた技能・職業教育訓練(TVET)を提供する場合、現在のTVETは質が低く、労働市場の需要に応えられないと危機感を示した。そのため、現行の制度を拡大することをやめ、改革した状態で拡大していくべきとした。
雇用市場との需要ギャップについては、グローバル化、人口動態の変化、デジタルトランスフォーメーション(DX)、気候変動によるグリーントランジションの3つにより、雇用需要の変化を強調。必要となるスキルだけでなく、経済機会の偏在にも影響を及ぼすとした。
同報告書は、今後の対策として6つの優先事項を示した。まず、最初の変革として、TVETを大学非進学者の「二流教育」の現状を打破し、労働市場の需要に合致した教育機会へのアクセスを確保していくことを挙げた。その上で、優先事項として、企業と生徒を中心に位置づけた上で、特に企業の需要を適格に把握するしていくことや、デジタル、グリーン、アントレプレナーの3つをスキルを重点的に教えていくことを挙げた。
また、TVETプロバイダーの都合ではなく、成果重視のカリキュラム及び指導者改革を進めるとともに、エビデンスを重視した意思決定を行うべきとした。
資金面についても、高所得国のTVETへの支出がGDPの0.46%であるのに対し、中低所得国は0.2%未満であることを踏まえ、民間資金を活用すれば、TVETに追加的なリソースを注入することができると表明。企業の貢献は大きいとした。そこで、企業の自発的な資金拠出を促すために、「研修税」のような課税制度は避けるべきとし、政府を経由した資金拠出は非効率とした。政府予算を活用する場合は一般財源が望ましいとした。
【参照ページ】Improve Technical and Vocational Education and Training (TVET) to meet skills and labour mismatch
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