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【国際】138ヶ国・地域、デジタル課税や最低法人税率で大枠ルール合意。国際条約制定へ

 税源浸食・利益移転(BEPS)に関するOECD/G20包摂的枠組みの加盟138ヶ国政府は7月11日、国際条約案の大筋と、実施に関する枠組み案の2つに合意した。2021年10月の合意以降、詳細な内容を決めるテクニカル交渉を経て、ようやく内容が固まった。

 税源浸食・利益移転(BEPS)に関するOECD/G20包摂的枠組みは、経済協力開発機構(OECD)とG20が合同で議論を進め、10月に双方の会合で正式合意した。合意事項は「二本の柱」で構成されており、第1の柱は、グローバルでの売上が200億ユーロ超かつ利益率が10%超の多国籍企業に対し、10%を超える利益のうち80%を事業実施国で納税するというもの。第2の柱は、事業実施国での法人税率を15%以上とするというもの。

【参考】【国際】G20財相・中銀総裁会議、デジタル課税や最低法人税率、サステナブルファイナンスで最終合意(2021年10月15日)

 同枠組みに現在加盟している138国・地域は、日本、米国、カナダ、英国、マン島、英領ケイマン諸島、英領バミューダ諸島、ドイツ、フランス、イタリア、スイス、スペイン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、マルタ、ロシア、トルコ、アラブ首長国連邦、カタール、バーレーン、オマーン、イスラエル、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、香港、マカオ、中国、韓国、インド、インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイ、パナマ等。遅れて、アイルランドも参加を決めた。

 二本の柱のうち、第2の柱については、日本を含めすでに50ヶ国を超える国・地域が導入を決定している。そのため、テクニカル交渉では、特に第1の柱と、第2の柱の課税対象ルール(STTR)及び実施枠組が焦点となった。

 まず。事業実施国での課税については、国際条約を設け、締約国が国内課税権を国内法的に保証するというスキームで合意した。国際条約には、許容される課税権の範囲と運用ルール、二重課税緩和措置、課税の確実性を確保するためのプロセス、発効時に既存のデジタルサービス課税(DST)や関連する類似の措置を撤廃するための条件、新たなデジタルサービス課税や関連する類似の措置を制定しないことへのコミット等が含まれる。

 今回の協議では、国際条約(MLC)案も示されたが、また一部の国・地域が内容に懸念を表明しているため、現時点では公表されていない。同条約案は、2023年後半に公表され、年末までに署名式が行われる予定。発効条件は、30ヶ国・地域の批准と、多国籍企業の親会社の60%以上を占める国・地域の批准の2つとみられる。同枠組みの加盟国は、2024年1月1日から、2024年12月31日もしくは同条約の発効日のいずれか早い日までの間に、デジタルサービス課税等の措置を導入することを禁止することにも合意。発効が遅れることを見越し、禁止期間を、2025年12月31日から、2025年12月31日もしくは同条約の発効日のいずれか早い日まで延長する道も残した。

 また、第1の柱で重要な概念となる「移転価格」の算出では、当該国の国内企業と比較した類推が行われるが、同様の国内企業がない発展途上国等を考慮し、特定作業を簡素化・合理化するためのルール概要でも合意した。定量的アプローチと定性的アプローチのバランスを適切に確保すること等が掲げられた。こちらの内容は、2023年9月1日までステークホルダーからの意見を募集し、年末までに完成させる予定。最終的に、同枠組み加盟国で承認し、2024年1月までにOECD移転価格ガイドラインに組み込む。

 第2の柱については、課税対象ルール(STTR)に関し、グループ企業内の利子、ロイヤルティ、その他一定の支払いに9%未満の名目法人税率を適用している同枠組み加盟国は、発展途上国との間での租税条約で発展途上国がSTTRの導入を要請した場合に、導入することにコミットすることで合意した。これにより、発展途上国は、グループ企業での税源浸食・利益移転(BEPS)に関し、積極的に課税できるようになる。

 STTRの迅速な導入では、条約改正を一括して行う「多国籍措置(MLI)」文書と、交渉担当者の理解を説明した「説明文書」を作成することで一致した。MLIは、2023年10月2日から署名を開始する。MLIに署名すると、既存の二国間の租税条約の条文を個別に改正することなく、一括して改正したことにできる。

 今回の合意事項が記載された成果文書は、7月17日から18日にインドのガンジナガルで開催されるG20財務大臣・中央銀行総裁会合に提出される。MLCやMLIの作成作業は、同時並行で進められる。

【参照ページ】138 countries and jurisdictions agree historic milestone to implement global tax deal

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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