中国海関総署(関税総署)輸出入食品安全局は7月7日、記者会見の中で、国際原子力機関(IAEA)が日本の福島第一原子力発電所ALPS処理水に関してまとめた包括評価報告書を発表したことについてコメント。日本の10都県からの食輸入を禁止し、その他の道府県からの食品、特に水産品については、税関での監視を強化すると発表した。
中国政府は、2011年3月の福島第一原子力発電所の事故後、福島県、群馬県、栃木県、茨城県、宮城県、新潟県、長野県、埼玉県、東京都、千葉県の10都県からの食品、食用農産物、飼料の輸入を禁止している。
日本政府は2021年4月、ALPS処理水の放出に関する基本方針を発表。同7月8日にはIAEAとの間で方針内容に署名し、安全性レビューの包括的手法に関する付託事項(TOR)を決定していた。2023年7月4日、IAEAが作成した包括的評価報告書が、日本政府に渡され、日本政府、東京電力、原子力規制委員会によるALPS処理水の海洋放出に関するアプローチは、国際的な安全基準に整合的と結論づけていた。また、東京電力が現在計画しているALPS処理水の海洋放出に関しても、ヒト及び環境に与える放射線の影響は無視できるものと結論付けた。
【参考】【日本】福島県等、原発ALPS処理水の海洋放出施設建設を了承。海洋放出の実施OKではない(2022年8月4日)
中国海関総署は今回、同報告書について、「評価に参加した全ての専門家の意見を完全に反映したものではなく、結論も全ての専門家が一致して受け入れたものではない」と主張。結論には問題があるとの立場を示した。
また、中国外交部も、日本政府が2022年7月に海洋放出を決定し、延期はしないと繰り返し強調してきたことを、日本政府による「既定路線」と批判。IAEAの評価が「形式的」なものにすぎないとの見方を伝えた。
中国生活環境部国家原子力安全局は、今後、海洋放射線環境のモニタリング体制を構築し、異常が発見された場合はタイムリーに警告を発すると宣言した。
中国の報道では、東京電力がこれまで汚染水に関するデータの隠蔽や改竄を繰り返してきたことで、東京電力が提出するデータが信頼できないと論法を採ってる。IAEAは日本政府を通じて提出されたデータを評価したのみで、もともとのデータにリスクがあるとしている。ALPS処理水について、今後の処理体制が万全とは言えず、不確実性が高いとしている。
【参照ページ】中国の輸入規制の概要
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