参議院本会議は6月14日、時間外労働を規制する貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律を賛成多数で可決した。すでに衆議院を6月1日に全会一致で可決しており、同法が成立した。
日本では、2018年に働き方改革関連法が成立。時間外労働の上限が月45時間、年360時間となった。大企業では2019年4月1日、中小企業から2020年4月1日から施行されているが、建設業や輸送業、医師等は2024年4月1日まで施行が延期されていた。輸送業は2024年4月1日から時間外労働の上限が年960時間とゆるく設定され、一般的な上限の適用はまだ未定。背景はトラックドライバー等が不足しているため。
【参考】【日本】小売大手4社、「持続可能な食品物流構築に向けた取り組み宣言」。2024年物流危機(2023年4月7日)
その際、貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律も議員立法で提出され成立しており、ドライバー不足により重要な社会インフラである物流が滞ってしまう状態を避けるため、緊急に労働条件を改善することを規定し、2024年4月から適用されることとなっていた。具体的内容は、違反事業者が新法人設立で規制逃れをすることの防止や、事業の継続遂行のための策定義務等を課し、荷主側についても配慮義務や国土交通省が荷主に勧告できる権限を付与する等していた。
また、法令適用までの2023年末までの時限措置として、国土交通相が荷主に対し、トラック事業者の法令遵守に関する要請を個別にできる権限を付与するとともに、同じく時限措置として、国土交通相が標準的な賃金を定め、告示できる「標準的な運賃の告示制度」も導入していた。今回も議員立法あった。
しかし、その後、新型コロナウイルス・パンデミックや原油価格高騰を受け、トラック事業者の経営状況は一層悪化したと判断。今回の法改正で、時限措置の部分について、2023年末までの時限措置ではなく、「当分の間」の措置とし、期限を撤廃することが決まった。
トラックドライバー危機については、全日本トラック協会は、10年以上前から、「送料無料」の表示をやめるよう、Eコマース事業者に要請している。同協会としては、「送料無料」が「輸送にはコストがかからない」という間違った考え方を植え付けていると考えており、日本通信販売協会(JADMA)も「送料当社負担」等を表記するようEコマース事業者に呼びかけている。しかし改善はあまり進んでいない。消費者庁は6月23日、全日本トラック協会との意見交換の場をもち、「送料無料」問題について対策協議に乗り出した。
【参照ページ】貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(令和5年法律第62号)について
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