内閣官房の再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議は6月6日、「水素基本戦略」を改定した。同戦略は2017年に策定し、5年ぶりの改定となる。
【参考】【日本】政府、「水素基本戦略」決定。褐炭をCCSでCO2フリー化する水素製造技術が柱か(2018年1月4日)
2017年に策定された水素基本戦略では、2030年頃の商用化、価格を17円/kWh、年間利用量を30万t程度、将来的には500万tから1,000万tとしていた。それを今回の改定では、2030年の水素等導入目標を300万tとし、10倍に引上げた。将来目標では、2040年目標を1,200万t、2050年目標は2,000万t程度とし、こちらも従来の目標水準から2倍となる。コストでは、現在の100円/Nm3を、2030年に30円/Nm3、2050年に20円/Nm3とした。
それに伴い、国内外における日本関連企業の水電解装置の導入目標を15GW程度に設定。日本国内ではなく、「国内外における日本関連企業」となったのは、経済産業省は現在、オーストラリア等で水素を生産し、日本国内に輸入する政策を進めているため。
日本での水素生産では、再生可能エネルギー、廃プラスチック、下水汚泥、副生水素等の未利用地域資源の活用に着目しつつも、コスト面が課題と言及。技術開発や生産への補助金を増やしていくことを含意した。
水素の電源活用では、2017年の戦略では、調整電源やバックアップ電源としての役割を説明しつつ、天然ガス火力での混焼も進めるとしていたが、今回の改定では、ガス火力発電との水素混焼や水素専焼、石炭火力発電へのアンモニア混焼やアンモニア専焼が主軸となった。
また、2017年の戦略では、産業用途は戦略の対象外としていたが、今回は明確に位置づけられた。具体的には、工場等での水素・アンモニア等の熱源利用、水素還元方式製鉄、化学プロセスでの水素利用、合成メタン(e-methane)、合成燃料(eFuel)が入った。改正省エネ法に基づき、需要側の対策を進める。
燃料電池車(FCV)等の水素活用に関しては、2017年の戦略では最優先のセクターだったが、位置づけが産業用よりも小さくなった。FCV政策では、FCVの特性が活かされやすい商用車分野を重点分野に設定。自動車メーカー、ステーション事業者、物流・荷主事業者がロードマップを共有し、戦略的な事業を進めることで導入拡大を図るとした。但し、「乗用車に加え」という表現も用い、自動車産業界との調整が道半ばとなっていることがうかがえる。
【参考】【日本】改正省エネ法、4月1日から施行。エネルギー全般の原単位削減や非化石転換を提唱(2023年3月1日)
実現に向けては、事業者が供給する水素・アンモニアに対し、事業継続に要するコストを合理的に回収しつつ適正な収益を得ることが期待される価格「基準価格」と、既存燃料のパリティ価格「参照価格」の差額の一部または全部を長期にわたり支援するスキームを検討するとした。サプライチェーンへの官民による投資額は、15年間で15兆円を超えると見積もった。
水素供給ハブでは、今後10年間で産業における大規模需要が存在する大都市圏を中心に大規模拠点を3ヶ所程度、産業特性を活かした相当規模の需要集積が見込まれる地域ごとに中規模拠点を5ヶ所度整備する。国土交通省が進めるカーボンニュートラルポート(CNP)等の政策とも連携する。
2017年の戦略では、再生可能エネルギー、副生水素、廃プラスチック、家畜糞尿、下水汚泥等の日本国内の地域資源を活用した水素サプライチェーンにも重きが置かれていたが、こちらも位置づけが小さくなった。地域資源水素の課題は、2017年戦略と同様、コストとし、経済産業省は地方自治体等に情報提供しながら、積極的な事業構想を促進するとした。こちらも地方自治体等への補助金が柱となる見込み。
国民理解については、2025年大阪・関西万博を絶好の機会とし、海外の事例を広く参考にしながら、水素・アンモニアに関する教育や普及啓発活動、国民や自治体、事業者による理解のための場づくりを行っていく考え。
【参照ページ】水素基本戦略
【参照ページ】再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議
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