国際エネルギー機関(IEA)は5月25日、エネルギー投資の状況を分析した年次報告書「世界エネルギー投資2023」を発行した。世界のエネルギー投資額は、2023年には約2.8兆米ドル(約393兆円)となり、このうち1.7兆米ドル(約239兆円)がクリーンエネルギー分野に投資される見込み。
2021年から2023年までのクリーンエネルギー分野への投資は、24%増加し、化石燃料への投資は15%増加すると報告。5年前の化石燃料への投資額とクリーンエネルギー分野への投資額の比率は1:1だったが、2023年には1:1.7となりクリーンエネルギー分野への投資額が大きく増加。しかし、この増加分の90%以上は先進国と中国への投資であり、他の地域との格差が大きいことも指摘した。
(出所)IEA
クリーンエネルギー分野への投資は太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーによる発電分野への投資が90%近くを占める。また、電気自動車(EV)の販売台数は2022年に急増し、2023年には約30%も増加すると予想され、ヒートポンプの販売台数は2021年以降、毎年二桁成長を続けている。
(出所)IEA
クリーンエネルギー分野への投資が増加している背景として、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー安全保障への影響や化石燃料価格の高騰、米国のインフレ抑制法、欧州、日本、中国等の各国の大型政策の影響等、様々な要因によって後押しされているとした。
石油・天然ガスの上流への投資は2023年には7%増加し、2019年の投資水準に戻ると予想。中東の大手国営石油会社は新型コロナウイルス・パンデミック以前よりも投資額が増加しており、燃料価格上昇により増加した2022年の利益は供給価格に還元されず、配当、自社株買い、債務返済に回されたと指摘した。IEAの「2050年ネットゼロ・エミッション・シナリオ(NZEシナリオ)」と比較して、2023年の化石燃料への投資額は2倍以上、石炭への投資額は約6倍になると報告した。
同報告書では、新興国や発展途上国に対するクリーンエネルギー分野への投資が不足していると警鐘を鳴らした。金利の上昇、政策枠組みや市場設計の透明性の低さ、脆弱な送電網インフラ等、多くの国々で投資が抑制されている。国際社会に対して、特に民間セクターの進出が遅れている低所得国への投資を促進するためのアクションを訴えた。IEAと世界銀行グループの国際金融公社(IFC)は2023年6月に新興国と発展途上国における民間セクターによるクリーンエネルギーへの投資拡大に関する報告書を発行する予定。
【参照ページ】Clean energy investment is extending its lead over fossil fuels, boosted by energy security strengths
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