【アメリカ】フィリップスとヴァンダービルト大学医療センター、放射線科でのCO2削減で協働

　医療機器世界大手蘭フィリップスと米ヴァンダービルト大学医療センター（VUMC）は5月22日、医療システムの二酸化炭素排出量削減と、ヘルスケア業界の環境戦略の強化に向け協働すると発表した。

　ヘルスケア業界からの二酸化炭素排出量は、米国の7.6%、世界の4.4%を占める。特に放射線科は、エネルギー、機器、消耗品の使用量が多く、大きな排出源となっている。今回のプロジェクトでは、放射線科が対象。VUMCのMR、CT、超音波、X線などの画像診断装置の消費電力量の測定と対策に重点を置く。

　両者は、放射線科データや消費電力量等の機器のライフサイクルデータの収集、運用フローの効率性分析、VUMC職員へのインタビューを行い、シミュレーション実行のための計算モデルを構築予定。その後、実証導入したソリューションをまとめ、二酸化炭素排出量の削減効果を検証する。

　フィリップスは2020年、100%再生可能エネルギー電力の調達や、カーボンオフセットを通じ、スコープ1、スコープ2でのカーボンニュートラル（二酸化炭素ネット排出量ゼロ）を達成済み。排出総量では、スコープ1、スコープ2で2025年までに75%、2040年までに90%削減、スコープ3のカテゴリー1「購入製品・サービス」、カテゴリー6「出張」、カテゴリー9「下流輸送・配送」、カテゴリー11「販売製品使用」での排出量を2020年比42%削減にコミット。科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ（SBTi）からの承認も得ている。

　またフィリップスは3月15日、ポルトガル生物医学研究財団のシャンパリモー財団とともに2028年までに同財団の診断・イメージング機器使用での二酸化炭素排出量を半減するため、パートナーシップを締結したことも発表した。

　両者は、ヘルスケア業界は、世界の二酸化炭素排出量の4.4%を占め、航空業界や海運業界よりも割合が大きいことを課題視。医療機器のアップグレード、機器寿命延長、プロセスのデジタル化、テイクバック・プログラムの提供、再生可能エネルギー電力の調達等を通じ、シャンパリモー財団のインフラ改革を実現する。

　フィリップスはまず、シャンパリモー財団の二酸化炭素排出量ベースライン評価を実施。その後、画像診断技術のアップグレード、資源消費量の削減、リサイクル材料使用への転換、機器の長寿命化等を展開する。

　製品導入では、従来機器比でエネルギー消費量を62.5%削減できるフィリップスのCTスキャン機器「Spectral CT 7500」や、必要なヘリウム量を従来機器の1,500lから7lまで削減できるMR検査機器「Ingenia Ambition 1.5T」を活用。Ingenia Ambition 1.5Tは、患者のMR検査1回あたりの消費電力量を最大53%削減することもできる。

　テイクバック・プログラムでは、シャンパリモー財団が現在設置しているフィリップスの機器を自社で引き取り、埋め立て廃棄を防止。その他、ハイブリッド手術室ソリューションの導入支援等も行い、患者の入院期間短縮を進める。

【参照ページ】Philips and Vanderbilt University Medical Center unite to define roadmap for decarbonizing radiology
【参照ページ】Champalimaud Foundation partners with Philips to reduce its diagnostic imaging carbon footprint by 50% in five years
【画像】Philips

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所