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【国際】55ヶ国加盟のプラスチック汚染廃絶連合、条約制定で野心的な提案表明。日本政府は消極姿勢か

 55ヶ国が加盟しているプラスチック汚染に関する高野心連合(HAC)は5月26日、同日開始されたプラスチック汚染に関する国際的な法的拘束力のある文書を作成するための政府間交渉委員会の第2回会合(INC-2)の直前に、閣僚声明を発表。2040年までにプラスチック汚染を廃絶するための条約内容を提案を表明した。

 HACは、ノルウェーとルワンダの両政府が2022年8月に発足。両政府が共同議長を務めている。発足時加盟国は、英国、ドイツ、フランス、スイス、カナダ、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ポルトガル、アイスランド、韓国、チリ、ペルー、エクアドル、コスタリカ、ドミニカ共和国、ジョージア、セネガル。その後に加盟したのは、EU、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、アイルランド、オーストリア、ルーマニア、ブルガリア、スロベニア、オーストラリア、ニュージーランド、メキシコ、コロンビア、パナマ、モルディブ、マリ、ナイジェリア、アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダン、ミクロネシア連邦、セイシェル、クック諸島等。5月26日に現時点では最後に日本が加盟した。

 今回の声明では、国連環境総会決議5/14に基づき、プラスチックのライフサイクル全体に対応する包括的なアプローチに基づき、2040年までにプラスチック汚染を撲滅し、プラスチック汚染から人間の健康と環境を守るとともに、生物多様性の再生と気候変動緩和に貢献することを目的とした野心的で効果的な国際法的拘束力のある条約体制の確立を要請した。国連総会決議76/300で、クリーンで健康的かつ持続可能な環境に対する人権を認識したことも歓迎した。

【参考】【国際】国連総会、持続可能な環境へのアクセスを「人権」と決議。日本政府も今度は賛成(2022年7月30日)

 また、現在の生産量の40%以上が使い捨て目的であることも強調。プラスチック製品及びプラスチックを含む製品の生産、輸送、使用、プラスチック廃棄物の使い捨てや劣化の際に、マイクロプラスチックが大気、水系、陸地に継続的に放出・蓄積され、人間の健康にリスクをもたらし、生態系と生物多様性の劣化にさらに寄与する恐れがあることについて深い懸念を再表明した。

 その上で、制定する条約に盛り込む内容として、15の提案をまとめた。

  • 条約の包括的な目的として、環境と人間の健康を守るため、あらゆる発生源からのプラスチック汚染を廃絶させることを掲げるよう要求する
  • 2040年までにプラスチック汚染を廃絶する我々のコミットメントを強化する
  • プラスチック汚染を廃絶するため、条約締約国に共通の法的拘束力のある義務と管理手段を開発し、関係者やその他のパートナーと協力し、条約の目的とアプローチとの努力の整合性を確保することが急務であると認識する
  • 一次プラスチックポリマーの生産と消費を抑制し、持続可能なレベルまで削減するための拘束力のある条項を条約に要求する
  • 予防原則を考慮し、サーキュラー型社会への影響を考慮して、不必要、回避可能、または問題のあるプラスチック、ならびに環境と人間の健康への悪影響により特に懸念されるプラスチックポリマー、化学成分、プラスチック製品を排除し制限するための拘束力のある規定を条約に要求する
  • 回避可能で不必要、かつ問題のあるプラスチックの削減に焦点を当て、一連の合意された基準を遵守するプラスチック製品のみが生産、輸入、輸出、市場に出されるようにすることを含め、廃棄物のハイアラーキー(優先順位)に導かれた経済におけるプラスチックの安全なサーキュラー性を高めるための拘束力のある条項を条約に要求する。締約国に、削減、修理可能、環境に優しく安全なリサイクル可能性および再利用、補充システム、再生素材の使用等の主要分野における目標を約束することを要求する
  • バリューチェーン全体で説明責任を果たすため、必要な生産・製品情報を提供するため、プラスチックのバリューチェーン全体における生産量、材料、化学物質、製品組成、トレーサビリティ、ラベルの報告及び透明性を確保するための拘束力のある条項を条約に盛り込むことを要求する
  • プラスチック廃棄物の発生を未然に防ぎ、回避が不可能な場合は、他の国際文書と整合性のある、環境的に健全かつ安全な方法でプラスチック廃棄物を管理するための拘束力のある規定を条約に要求する
  • 他の国際文書に基づき、マイクロプラスチックを含むプラスチックの大気、水系、陸上への放出を排除するための拘束力のある条項と、製品に意図的に添加されたマイクロプラスチック、プラスチックペレットの放出、漁具の喪失等の特定のプラスチック汚染源に対処する措置を条約に要求する
  • プラスチック汚染を終わらせるための地上での行動を実現するために必要な、あらゆる排出源での実施手段を動員するための拘束力のある条項を条約に要求する
  • 発展途上国における社会経済的・環境的に不釣り合いな悪影響を認識し、環境的に健全な方法で、科学的・証拠に基づく社会・経済・環境影響評価と各国の状況に従い、利用可能な最善の技術と環境慣行を用いて、環境への悪影響を悪化させないように、既存のプラスチック汚染を是正する条項を要求する
  • グリーンウォッシュを許さず、条約の実施を支援し、ナレッジ、科学的証拠、専門知識、技術の共有、及び実施を支援するための財源の動員や資金フローを調整するため、特定の分野に焦点を当てたマルチステークホルダー行動アジェンダの設立を要求する。
  • 全締約国に対し、全てのステークホルダーやその他のパートナーとともに、プラスチック汚染を削減するための即時行動と、条約を見据えて、国内行動計画を含め、国内の政策やアプローチを強化するための準備ステップを進めるよう要求する
  • 2024年末までに条約制定作業を完了させるため、2023年5月29日から6月2日までフランスのパリで開催されるINC-2において、以下を含む良好で実質的な進展を図ることが重要であると強調する:事務局の設置、INCの交渉の指針となる条約の目的についての暫定合意、INC-3での検討のための条約文案の作成、会期中に行う作業の決定
  • 国連環境総会決議5/14「プラスチック汚染の終焉:国際的な法的拘束力のある制度に向けて」に従い、INCの今後の会合で高いレベルの野心を示すよう全ての加盟国に推奨する

 日本政府は、直前に加盟したため、今回の閣僚声明の作成には関与できていない。加盟した理由について、経済産業省は、「54の国・地域が参加するHACの中でしかるべき議論に参画し、HACとしても生産から廃棄物管理までに至るプラスチックのライフサイクルの全ての段階において汚染対策に向けた取組を促し、各国の状況とその有効性を含む社会経済的影響を考慮に入れ、できるだけ多くの国が参画する実効的かつ進歩的な条約の策定に貢献をすることが重要であると考え」たとし、高い野心の条約制定に消極的な姿勢を示し、ブレーキ役を果たすために加盟したことを示唆した。

【参照ページ】High Ambition Coalition Joint Ministerial Statement INC-2
【参照ページ】プラスチック汚染対策の条約策定交渉に関する高野心連合(HAC)へ参加します

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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