英海運用原子力発電技術開発スタートアップのコア・パワーは5月22日、今治造船や尾道造船等の日本企業13社が出資したと発表した。日本経済新聞が同日、報じた。出資総額は約8,000万米ドル(約110億円)。
コア・パワーは2018年に創業。ミカル・ボーエCEOは、海運、金融、テクノロジーの分野で、30年の経験を持つという。他の役員の素性がよくわかっていない。ホームページには日本語ページまで用意されており、日本に関心が高いことがうかがえる。
同社が進めているのは、小型で大量生産可能な新しい先進的原子力技術。特に、ウラン燃料を含む液体の燃料塩を燃料とする溶融塩炉(MSR)の開発を進めている。MSRに使用される塩化物塩は400℃以上で融解し、沸点に至るまで1,000℃以上の使用領域がある。特に、高速スペクトルMSRでは塩化物塩(NaCl)が好んで使用されるという。
コア・パワーは、天然ウランを20%以下に濃縮した高純度低濃縮ウラン(HALEU)燃料のサイクル運転用に設計した溶融塩化物高速炉を史上初めて建設することを目指している。建設場所は、米国のアイダホ国立研究所で、同社がプロジェクトに参加している。ホームページでは、「燃料と冷却材が一体化して、燃料は常に冷却材に閉じ込められているため、原子炉がメルトダウンすることはない」と強調している。
コア・パワーによると、溶融塩炉(MSR)のアイデアは、ユージン・ウィグナー氏が考案で、1940年代後半に、原子力長距離飛行機の構想が生みだされたという。最初の実用的なMSRは、1954年に米国テネシー州のオークリッジ国立研究所(ORNL)で実施された航空機原子炉実験装置(ARE)で、AREは合計96MWhの運転を行ったが、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の登場により、計画は中止。その後、1956年に、当時ORNL所長であったアルヴィン・M・ワインバーグ氏が、液体燃料の使用経験を基にORNLでグループを結成し、1962年に溶融塩炉実験装置(MSRE)と呼ばれる実験炉の建設に着手。そのわずか4年後の1966年にMSREは始動している。丸4年間運転したものの、溶融塩増殖炉(MSBR)と呼ばれるより大きなMSRの原型を作るため、1969年に予定通り停止となり、その後の資金が削減され、計画は中止となった。1970年から2000年にかけ、MSREで明らかになった初期の多くの課題を解決するために広範な研究が実験室で行われ、2001年、第四世代フォーラムではMSRが6つの第四世代Vコンセプトの1つとして選出された。
アイダホ国立研究所での溶融塩炉実験装置(MCRE)開発に参画しているのは、コア・パワーの他に、テラパワー、サザン・カンパニー、3M、オラノ、米国電力研究所(EPRI)。米エネルギー省の先進炉実証プログラム(ARDP)を通し、費用分担出資契約で、5年間で1億7,000万米ドルの資金拠出を得ている。
コア・パワーは、原子力電気船の開発が主眼だが、浮体式原子力発電や、それを活用した浮体式海水淡水化装置の開発も進めている。今回の報道では、浮体式原子力発電に日本企業13社が関心を示した模様。
【参照ページ】Japan's Onomichi Dockyard leads $80m investment in CORE POWER
【画像】Core Power
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