G7デジタル・技術相は4月29日と30日、群馬県高崎市で会合を開催し、閣僚宣言を採択した。日本からは、河野太郎デジタル担当相、松本剛明総務相、西村 康稔経済産業相が出席。デジタル分野は独立の省を持っていないG7諸国は多く、大臣級の出席はフランスとドイツのみ。それ以外は副大臣、政務次官、次官補等が出席した。EUからはマルグレーテ・ヴェステアー欧州委員会上級副委員長が出席した。
閣僚宣言では、米国が過去2回開催した民主主義サミットでの参加国コミットメントを再確認し、テクノロジー企業が、責任ある行動を取り、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)へのコミットメントを強化し、人権侵害から保護する必要性を強調した。内容には、AI、バイオテクノロジー、量子テクノロジー等の新興技術を含むテクノロジーの設計、開発、維持、ガバナンス、取得、資金提供、販売、使用方法としては、平等、インクルージョン、サステナビリティ、透明性、アカウンタビリティ、ダイバーシティ、プライバシーを含む人権の尊重等の民主主義の原則が含まれるとした。
【参考】【国際】米主催の民主主義サミット、4カ国が「輸出管理・人権イニシアチブ」発表。同盟国とともに(2021年12月12日)
【参考】【国際】11ヶ国、商用スパイウェア使用の規制強化で共同声明。米政府は政府機関での使用を原則禁止(2023年4月1日)
また、デジタルは、経済成長、開発、社会福祉の実現にデータが重要な役割を果たすと認識し、「DFFT(信頼性のあるデータ流通)」を大きく提唱。データの越境移転の可能性を最大限に活用するための国際政策議論を進めるとした。透明性やデータ保護等の枠組み、ガイドライン、基準、技術等を通じて信頼性を構築すべきとの考えで一致。経済協力開発機構(OECD)や、G7データ保護及びプライシー・ラウンドテーブル、DFFTに関連する専門家グループ、マルチステ―クホルダーフォーラム等で知識共有の協力を目指すとした。その中で、OECDレポート「信頼性のあるデータ流通の前進:ビジネス経験の新たな証拠及び分析」がエビデンスに関する共通認識となった。
さらに、DFFT具体化に向け、マルチステークホルダー型の検討機関「Institutional Arrangement for Partnership(IAP)」の設立を決定。数ヶ月以内に立ち上げる。検討事項は、データに関する既存の規制要件に適合的なデータ流通を可能にするための相互互換性のある政策、ツール、プラクティスの開発、DFFTに対する主要な阻害要因及び課題、プライバシー強化技術(PET)等のDFFTに関連のある技術開発、モデル契約条項等のリーガル・プラクティスや国際プライバシーフレームワーク等の認証メカニズムを盛り込んだ。運営はOECDが担う予定。
デジタルデバイド対策では、解消のため、発展途上国や新興国を含む同志国との協力強化にコミット。格差是正では、あらゆる年齢と背景を持つ人々が基本的なデジタルスキルが必要と認識した。
責任あるAIとAIガバナンスでは、OECDが2019年に「AIに関するOECD原則」を想起。人間中心で信頼できるAIを推進するとした。また、民主主義の価値を損ない、表現の自由を抑圧し、人権の享受を脅かすようなAIの誤用・濫用に反対することで一致した。AIガバナンスの枠組み間の相互運用性については、民間主導のマルチステークホルダープロセスを通じ、標準開発組織(SDO)での国際技術標準の開発・採用を奨励。国際機関がツール開発を支援するとした。ChatGPT等の自動生成AIについては、機会と課題を早急に把握する必要性で一致。AIガバナンスや著作権を含む知的財産権の保護、透明性の促進、外国からの情報操作を含む偽情報への対処方法や、責任ある自動生成AI活用で、G7での議論の場を設ける考えをまとめた。
【参考】【国際】15ヶ国・地域、AIに関するグローバル・パートナーシップGPAI設立。OECD原則を基軸に(2020年6月21日)
デジタルインフラのレジリエンスでは、地上系ネットワーク、海底ケーブルネットワーク、非地上系ネットワークで冗長性を高め、複層的なネットワークを開発、展開、維持することが重要と認識。特に、海底ケーブルネットワークでは、地政学リスクが孕んでおり、G7や同志国との関係強化を謳った。あわせて、「Beyond 5G/6G時代におけるG7将来ネットワークビジョン」を採択。データ通信量の増加に伴うエネルギー消費と環境負荷を最小限に抑えるためには、ネットワーク全体の消費電力の大幅な削減とエコデザインのネットワーク機器の開発が、持続可能なデジタル社会の実現に不可欠な要素とした。
自由で開かれたインターネットの確保では、未来のインターネットに関する宣言(DFI)を再確認。世界的な遵守を目指し、各国への賛同をさらに呼びかける。世界中のステークホルダーとも連携する。2025年に行う世界情報社会サミット(WSIS)の成果レビュー(WSIS+20)を含め、デジタル協力に焦点を当てた今後の国連プロセスについて議論するためのコンタクトポイント・グループの発足を要請した。
【参考】【国際】60カ国・地域、「未来のインターネットに関する宣言」発表。民主主義、基本的自由、人権(2022年5月3日)
デジタル・プラットフォーマー規制では、競争当局と政策立案者によるデジタル競争に関するサミットを2023年の秋に開催することを確認した。さらに常設の担当者連絡グループも設置する予定。
【参照ページ】G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合の開催結果
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