国際資本市場協会(ICMA)は4月5日、EU理事会と欧州議会は2月にEU公式グリーンボンド基準「欧州グリーンボンド(EuGB;EU GBS)」の創設に関するEU規則案で政治的合意に達したことを受け、見解を伝えるメモを発表した。内容を歓迎するとともに、市場への潜在的な影響についても分析した。
【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、EUグリーンボンド基準規則で政治的合意。15%の柔軟性ポケット(2023年3月5日)
ICMAは今回、欧州グリーンボンド規格が、義務ではなく、任意の規格であることを確認。欧州議会はレビュー条項の挿入も求めていたが、ICMAとしてはレビュー条項の当否も含めた詳細はまだ明らかにななっていないとの認識を示した。
また、欧州グリーンボンド規則の適用対象は、欧州委員会とEU理事会は、欧州グリーンボンド(EuGB)とセカンドオピニオン提供会社のみを対象とし、一方、欧州議会は環境プロジェクトを資金使途とする他のボンドやサステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)も必須という立場だった。ICMAとしては、今回の政治的合意では、欧州グリーンボンド(EuGB)とセカンドオピニオン提供会社は必須としつつ、その他のボンドやSLBは任意となったとの認識を示した。
EUタクソノミーのテクニカル・スクリーニング基準(TSC)との関係性では、政治的合意では、最大15%までは整合性がないものを許容する「柔軟性ポケット」が設けられている。但し、TSCが存在しない環境プロジェクト、もしくは国連気候変動枠組条約事務局に報告される気候変動資金や、経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)に報告される政府開発援助(ODA)であることが求められる。また、セーフガード要件等は課せられる。
過去発行分への同規則適用免除(グランドファーザリング)については、まだ詳細が決まっていない模様。交渉過程では、EU理事会は、完全な適用除外を求めたが、欧州委員会は5年間の適用除外を、欧州議会は場合毎に5年から10年の適用除外を要求。政治的合意では7年の適用除外で妥結したとの報道もあったが、ICMAとしては詳細合意事項は確認できないとの認識を示した。
ICMAは今回、欧州グリーンボンド規格の採用が広がるかは、DNSH要件やミニマム・セーフガーディング要件に関するデータの入手不可能性や、EUの法律や基準への依存度の高さが決め手となると分析。欧州の電力会社やエネルギー会社による再生可能エネルギープロジェクトでは活用が進むのではないかとの見立ても披露した。
また、現状のグリーンボンドでのEUタクソノミー整合性は平均14%と低いという分析結果も提示。一方、パリ協定との整合性を図る上で、EUタクソノミーとの整合性が低いことは課題との考えも示し、今後、EUが使い勝手の好い欧州グリーンボンド規格に仕上げることで、整合する資金使途が増えることを期待した。
【参照ページ】ICMA update on the EU GBS Provisional Agreement
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