米大統領府(ホワイトハウス)は4月11日、非常に強力なオピオイドとして知られるフェンタニルとその前駆体のサプライチェーン取締を強化する政策を発表した。フェンタニルは、主に中国で生産され、メキシコのカルテルが米国内に違法に流入させているとみられている。
フェンタニルは、ヤンセンファーマ創業者のポール・ヤンセンが1959年に開発。1968年には、米国で医療用途で承認されている。フェンタニルは現在、医療で最も広く使用されている合成オピオイドであり、世界保健機関(WHO)の「WHO必須医薬品リスト」にも掲載されている。
一方、フェンタニルが処方薬としてではない形で違法流通しており薬物過剰摂取が米国内で社会問題にもなっている。2018年以降、フェンタニルは、米国に薬物過剰摂取による死亡でヘロインを抜き最多となった。2021年には71,238人以上ば死亡。フェンタニルは依存症も引き起こす。またヘロイン等の他の薬物に混入する形でも使用されている。
当時のトランプ大統領は、フェンタニルの製造元である中国への責任転嫁を開始。当時発表されいた2017年のフェンタニル過剰摂取死者数は28,869人で現在より遥かに少なかった。中国政府は2019年5月、フェンタニルと2つの前駆体の規制を発表した。それでも不服としたトランプ大統領は、化学メーカー、ITプラットフォーマー、輸送、金融機関のCEOに対し、フェンタニルへの取引関与を自発的に阻止する「要請」を送付。トランプ大統領は自身のツイッターで「命令する」と表現し、実質的「命令」と受け止められた。2022年8月にナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問した後、中国政府は大きく反発し、フェンタニルに関する米国への協力を停止すると表明している。
今回のバイデン政権ホワイトハウスの発表では、まず、米国の情報機関と国内法執行機関の間の連携と情報共有を強化。違法フェンタニルやその類似品の製造時に使用される前駆体や機器の原産地、輸送、目的地を正確に追跡し標的としていく。また、不正合成麻薬の取締を強化する国際ネットワークを組成し、二国間及び多国間アプローチで、不正薬物の製造防止、新興薬物の脅威検出、取引の阻止、不正金融への対応、公共の安全と公衆衛生への影響への対応等を進める。
企業に対しては、輸送事業者との協力強化、違法フェンタニルの生産に使用されうるデュアルユースの化学物質や機器の販売や流通に対する安全保護に関する企業教育、化学メーカーとのグローバル規模でのエンゲージメント強化に乗り出す。金融機関に対しても、麻薬密売に関連する不正金融やマネーロンダリング防止対策について国際的なパートナーとの連携を強化するとともに、金融制裁も発動していく。
米国からの対策要請を受けているメキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は4月4日、中国の習近平国家主席に書簡を送り、中国からメキシコに流入してくるフェンタニルの輸出規制に協力するよう要請。間に挟まっているメキシコ自身が中国で協議する状況にまでなっている。
一般的な観測では、フェンタニルや前駆体については、インドでも生産が進んでいると見られている。またナイジェリア、南アフリカ、インドネシア、ミャンマー、オランダ等もリスクが高まっているという。
【参照ページ】FACT SHEET: Biden-Harris Administration Announces Strengthened Approach to Crack Down on Illicit Fentanyl Supply Chains
【参照ページ】Fentanyl Advisories
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら