国際エネルギー機関(IEA)は3月24日、炭素回収・利用・貯留(CCUS)のプロジェクト・データベースを公開した。現時点で世界570件以上の案件が掲載されている。
CCUSは、2022年に大幅に増えた。140以上の新規プロジェクトが発表され、計画されている貯留容量が80%、回収容量が30%増加。また、中南欧、中東、東南アジアの7カ国でもCCUSプロジェクトが初めて発表され、CCUSの開発計画を持つ国は45カ国にまで到達した。
現在稼働しているCCUSプロジェクトは47件。合計。二酸化炭素回収能力は45.9Mt。2030年までの計画では、すでに21.1Mt分の建設が始まっており、計画段階のものも253.8Mtある。現時点での稼働は北米が24.7Mtで約半分を占める。残りは中南米が8.7Mt、オセアニアが4.0Mt、中東が3.7Mt、欧州とアジアが2.4Mt。計画段階のものも含めると、北米が161.8Mt、欧州が95.0Mtにまで急成長。アジアでも27.2Mtと現状から11倍にまで増える。
現在稼働しているもののうち、天然ガス加工での炭素回収が31.1Mtで約7割を占める。その多くは、石油・ガス大手による回収で、石油増進回収(EOR)で利用されている。2030年までの計画では、発電・熱が72.3Mtで首位となり、天然ガス加工が71.2Mt、水素・アンモニア(ブルー水素)が59.6Mt、燃料転換が44.1Mt、バイオ燃料が27.9Mtで追う展開となる。鉄鋼やセメントでの製造プロセスでの炭素回収は少数派にとどまる。
発電でのCCUSでは、米国で既存の石炭火力発電所で回収を計画されているものが多く、米国だけで44.3Mtと61%を占める。一方、2位は英国の22.9Mtで、CCS付きバイオマス発電(BECCS)での大型導入が計画されている。欧州では、廃棄物発電所での導入も多数計画されている。
ビジネスモデルの転換も予想される。現時点では、二酸化炭素を一つの回収施設から一つの圧入地点まで輸送する「フルチェーン」プロジェクトのみの状況だが、今後はアンバンドル化が進み、複数の排出企業から回収し、まとめて輸送する「CCUSハブ」プレーヤーが出現し、主流になっていく見通し。
増加の背景には、米国。カナダ、英国、EU、オーストラリアでの政策後押しがある。多額の補助金がついたことで産業化が進んだ。一方、CCUSビジネスがハブ化されると、取引先の運転状況に依存するサプライチェーンリスクも増える。こうしたリスクの軽減策は、北米や英国ですでに検討が進んでいる。越境プロジェクトも増加すると予想され、国際的な規制整備の議論も欧州を中心に進展している。
【参照ページ】How new business models are boosting momentum on CCUS
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