経済産業省電力・ガス取引監視等委員会は3月31日、中国電力に対し、業務改善勧告を発出した。自社の燃料消費抑制を狙い、スポット市場で高値での買い入札を継続的に行っていたと判断した。
今回の業務改善勧告は、2021年11月に規制強化した「適正な電力取引についての指針」において「問題となる行為」に該当すると判断されたもの。同指針改訂の背景には、2021年1月のJEPX(日本卸電力取引所)での卸電力市場価格高騰があり、大手電力会社が、グループ内の発電子会社に指示して発電量を意図的に減らし、JEPXへの電力の販売量を絞ることで、価格を釣り上げる行為が可能な状態であることが懸念されていたため。発電所の停止に関する報告義務を強化した。
【参考】【日本】公取委と経産省、「適正な電力取引についての指針」改正。大手電力の報告義務強化(2021年11月18日)
今回の判断では、2022年3月と2022年10月、中国電力が、適時公表が求められているにもかかわらず、公表せずにスポット市場で関連取引を行った。具体的には、自社の燃料在庫がなくなることをおそれ、発電所の出力抑制を行うとともに、スポット市場で高値での買い入札を継続的に行った。
出力抑制機関は、2022年3月6日から8日まで、水島発電所3号機で計2日間、玉島発電所1号機で計2日間。また2022年10月18日から29日まで玉島発電所3号機で計9日間。
今回の勧告では、卸電力市場におけるインサイダー取引の事案として扱っている。例えば10月の事案に関しては、電力・ガス取引監視等委員会は、戦略買いによる出力抑制は、対象ユニットにつき日々の需給に合わせて低下させたものではなく、限界費用に比して高い価格を入札することで意図的に出力を抑制させたものである点で「出力低下」に該当する都市的。また、同社にとって戦略買いを実施することの決定は、特定のユニットの燃料消費抑制の実施を相当程度の確実性をもって判断したものであったと言え、遅くとも戦略買い入札を内部で意思決定した時点で、戦略買い入札の約定とそれによる出力低下が「合理的に見込まれる」に至ったと認められる、とした。
電力大手に関しては、他にも、カルテル問題や、新電力の顧客情報を不正に閲覧した問題が続々と発生している。中部電力、中部電力ミライズ、関西電力、中国電力、九州電力が関わったカルテル問題については、公正取引委員会が総額1,010億円の課徴金支払命令を発出。経済産業省資源エネルギー庁としても3月31日、カルテル事件の原因と課題について、中部電力、中部電力ミライズ、関西電力、中国電力、九州電力に対し、小売電気事業に係る法令等遵守の観点から組織の文化まで踏み込んだ検討を行った上で結果を報告することを命令した。
これを受け、中国電力では、清水希茂代表取締役会長と、瀧本夏彦代表取締役社長執行役員が次の定時株主総会で退任することを発表した。
【参考】【日本】公取委、電力5社のカルテルで総額1010億円の課徴金支払命令。過去最大額(2023年3月30日)
顧客情報不正閲覧問題では、内閣府の再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォースが3月2日、抜本的な改革として、罰則強化や、現在は同一企業グループ内で分社化されている送配電会社を所有権を含めて完全に分離させることを求める提言書を、タスクフォース委員4人全員の総意として提出した。
一方、電力・ガス取引監視等委員会は3月16日、経済産業相に対し、情報閲覧ルールの徹底等のみが必要との考えを回答している。電力・ガス取引監視等委員会は3月31日、経済産業相に対し、業務改善命令を発出するよう勧告した。内容は、内部管理体制の強化が主。
【参考】【日本】東北電力、新電力の顧客情報を不正に閲覧発覚。関西電力も。当局は緊急点検要求(2023年1月15日)
【参照ページ】中国電力株式会社に対する業務改善勧告を行いました
【参照ページ】小売電気事業者に対し、法令等遵守のための指示を行いました
【参照ページ】第25回 再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース 会議資料
【参照ページ】再エネ業務管理システムの不正閲覧事案に関する意見聴取について意見を回答しました
【参照ページ】一般送配電事業者の情報漏えい事案に関し、経済産業大臣に対する勧告を行いました
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