気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は3月20日、IPCC第6次評価報告書(AR6)の統合報告書を公表した。第58回総会が3月13日から3月20日に開催され、政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、同報告書の本体が採択された。
統合報告書は、第1作業部会(WG1)報告書から第3作業部会(WG3)報告書までの報告書を全体として総合してまとめた報告書。統合報告書の公表をもって、第6次評価報告書の発行作業が全て終了したことになる。
【参考】【国際】IPCC、第6次報告書のWG1報告書公表。2040年に1.5℃上昇。2100年に2m海面上昇のリスク(2021年8月10日)
【参考】【国際】IPCC、第6次報告書のWG2報告書公表。世界30億人以上が気候変動に脆弱。生態系重要(2022年3月2日)
【参考】【国際】IPCC、第6次報告書のWG3報告書公表。エネルギー、不動産、輸送、農業で産業革命必要(2022年4月5日)
同報告書では、産業革命期に比べ2020年までに1.1℃気温が上昇していると強調。大気、海洋、雪氷圏、生物圏に広範かつ急速な変化が起こっており。人為的な気候変動はすでに世界中の全地域で多くの気象と気候の極端現象に影響を及ぼし、自然と人々に対し広範な悪影響や損失をもたらしているとした。
現行の対策では、気候変動を緩和する政策や法律は、前回のAR5以降、一貫して拡充してきているものの、2021年10月までに提出された国別削減目標(NDC)に基づくと、21世紀の間に1.5℃を超える可能性が高く、2℃に抑制することも困難なままとした。資金フローが不足していることを課題としてあげた。
長期予測では、気候変動が進行するにつれ、同時多発的な災害が増大する可能性が高く、前回のAR5と比べ最大で数倍にまでリスクが膨れ上がっているとした。また、突発的で不可逆的な変化が起こる可能性は気温上昇の水準が高くなるにつれて増大。対策としては、世界全体の二酸化炭素排出量の大幅で急速かつ持続的な排出削減によって抑制するしかないとした。
削減ペースでは、1.5℃と2℃の双方で、2019年比の削減率を中央値、5パーセンタイル、95パーセンタイルで3つを提示。1.5℃では、2030年に中央値で43%、5パーセンタイルで34%、95パーセンタイルで60%。2035年には、中央値で60%、5パーセンタイルで49%、95パーセンタイルで77%。2040年には中央値で69%、5パーセンタイルで58%、95パーセンタイルで90%。2050年には、中央値で84%、5パーセンタイルで73%、95パーセンタイルで98%とした。
同削減率を実現できない「オーバーシュート」の状態となると、変化が不可逆的となる可能性が高く、その後の対策費用が高くつく。一方、仮にオーバーシュートしたとしても、今度は世界全体でカーボンネガティブを実現していくことが重要になることで、リスクを低減することができ、諦めることなく不断の努力を求めた。
気候変動適応では、すでに実現可能で効果的な適応の選択肢があり、それらでもリスクを減少できると指摘。但し、気温上昇が進めば、選択肢の幅は狭まり、さらに施策の効果は減少するとした。
【参照ページ】Urgent climate action can secure a liveable future for all
【参照ページ】気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書 統合報告書の公表について
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