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【アメリカ】政府、2行の経営破綻で預金全額保護の例外措置発動。銀行規制強化の検討も開始

 米ジョー・バイデン大統領は3月13日、記者会見の中で、経営破綻したシリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー銀行について言及。連邦政府としての対処方針を示した。米国の銀行システムは安全と示し、取付騒ぎや信用縮小への懸念払拭に努めた。

 まず、預金保険基金を原資とし、シリコンバレー銀行とシグネチャー銀行の預金は同日から全額保護され、中小企業も含む預金者が損失を被ることはないと明言した。一方、銀行の救済は行わず、同銀行に投資ししてる投資家は保護されないと強調した。投資家はリスクをとってリターンをとることが資本主義の仕組みとした。

 また、経営陣の解雇も宣言。そのうえで、原因の全容を究明するとした。最後に、リーマンショック後に導入されたドッド・フランク法が今回の事態を防げなかったことに課題感を示し、銀行に対する規制を強化するとした。

 シリコンバレー銀行は、2022年末時点で総資産2,090億米ドル(約28兆円)、総預金1,754億米ドル(約24兆円)。カリフォルニア州とマサチューセッツ州に全17支店を構えていた。シリコンバレーのスタートアップ顧客を急速に獲得し、近年、与信が急拡大していた。増えた資産は、米長期国債に投資していたが、インフレにより債券価格が下落。同時に昨今のスタートアップ不況及び関連の解雇で、大量の預金流出が発生し、ALMが急速に悪化していた。それを受け、ムーディーズが、格付の二段階引き下げの可能性を示唆し、3月8日に実際に格下げを実施。同行は、資産を210億米ドル売却し、150億米ドルの借入と、20億米ドルの増資で乗り切る計画を伝えたが、ピーター・ティールのFounders Fundや、Union Square Ventures、Coatue Management等のベンチャーキャピタルが同行からの預金引上げを投資先スタートアップに促したことで、さらに預金流出を引き起こしていた。

 シグナチャー銀行も、2022年末時点で総資産1,104億米ドル(約15兆円)、総預金886億米ドル(約12兆円)。ニューヨーク州、カリフォルニア州、コネティカット州、ノースカロライナ州、ネバダ州に全40支店を構えていた。シグナチャー銀行は、暗号資産(仮想通貨)関連の企業からの預金顧客を集め、急成長。但し、SVBの経営破綻を受け、同行に対する信用不安の噂が広がり、取付騒ぎに発展。預金が一気に流出し、経営破綻した。暗号資産絡みでは、1収監前に、同様の分野で強みを持っていたシルバーゲート銀行の持株会社シルバーゲート・キャピタルも事業閉鎖し、預金全額返金を発表したことも災いした。

 シリコンバレー銀行に関しては、カリフォルニア州金融保護革新局が3月10日、連邦預金保険公社(FDIC)を管財人に任命し、銀行を閉鎖。同行は、FDICの預金保険の加盟行で、預金をFDICが新設したサンタクララ預金保険ナショナル銀行(DINB)に移管し、制度上の預金保険対象額については預金へのアクセスが完全に確保された。

 また、シグナチャー銀行に関しては、ニューヨーク州金融サービス局が3月12日、FDICを管財人に任命し、銀行を閉鎖。同行も、FDICの預金保険の加盟行で、預金をFDICが運営するシグネチャー・ブリッジ・バンクに移管した。

 3月12日には、イエレン財務長官は、両行について、FDICと連邦準備制度理事会(FRB)からの勧告を受け、大統領と協議した後に、預金保険対象外となる法人口座や、保護上限額を超えた個人預金についても、全額保護するシステミックリスク例外措置の発動を決定。預金保険の保護上限を超えた額についても、管財人証明書を発行し、保護することを決めた。両行は3月13日、シリコンバレー銀行の資産は、FIDCが運営するシリコンバレー・ブリッジバンクに移管され、シリコンバレー・ブリッジ・バンクとシグナチャー・ブリッジ・バンクとして営業を再開し、全ての契約履行も引き継いだ。

 FRBは3月12日、預金保護を強化するため、銀行ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)を新設し、銀行、貯蓄組合、信用組合等の預金取扱機関に最長1年の融資を行うことができる制度を発動。米国債、政府機関債、住宅ローン担保証券等の資産を担保として、流動性を供給する体制を構築した。これにより、マクロ金融のシステミックリスクを抑える。財務省も、BTFPのバックストップとして、為替安定化基金から250億米ドルを上限とする資金供給ができるようにした。さらにFRBは3月13日、シリコンバレー銀行の経営破綻を踏まえ、マイケル・S・バー監督担当副議長が監督・規制の見直しを主導すると発表。5月1日までに規制改革方針を公表する予定。

 SVBの持株会社SVBフィナンシャル・グループの株主は3月13日、同社とCEO及びCFOを提訴。米司法省と米証券取引委員会(SEC)もSVBフィナンシャル・グループの経営破綻に関し捜査を開始したと報じられている。

 さらにムーディーズは3月13日遅く、米国金融システムの見通しを「安定」から「ネガティブ」に引き下げた。さらに、ファースト・リパブリック銀行、ウェスタン・アライアンス・バンコープ、イントラスト・ファイナンシャル、UBMファイナンシャル、ザイオンズ・バンコープ、コメリカの米6行についても格下げ方向で検討していることも明らかにした。格下げを発表しなければならない格付機関と、取付騒ぎ懸念との間に、マクロ・プルーデンス上の大きな課題があることがあらためて浮き彫りとなっている。

 またブルームバーグは3月14日、EUで登録されているESGファンドのうち915ファンドが、シリコンバレー銀行に直接または間接的に投資していたことを伝え、ガバナンス(G)リスクに関する方針が甘いと警鐘を鳴らした。

【参照ページ】Remarks by President Biden on Maintaining a Resilient Banking System and Protecting our Historic Economic Recovery
【参照ページ】FDIC Creates a Deposit Insurance National Bank of Santa Clara to Protect Insured Depositors of Silicon Valley Bank, Santa Clara, California
【参照ページ】FDIC Establishes Signature Bridge Bank, N.A., as Successor to Signature Bank, New York, NY
【参照ページ】Joint Statement by the Department of the Treasury, Federal Reserve, and FDIC
【参照ページ】FDIC Acts to Protect All Depositors of the former Silicon Valley Bank, Santa Clara, California
【参照ページ】Federal Reserve Board announces it will make available additional funding to eligible depository institutions to help assure banks have the ability to meet the needs of all their depositors
【参照ページ】Federal Reserve Board announces that Vice Chair for Supervision Michael S. Barr is leading a review of the supervision and regulation of Silicon Valley Bank, in light of its failure

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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