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【アメリカ】2024年予算教書発表。生活費支援、環境、移民、対中国、富裕層増税。10年で財政赤字400兆円削減

 米ジョー・バイデン大統領は3月9日、2024年度の予算教書を公表。歳出が前年度比8.0%増の6兆8,830億米ドル。歳入は前年度比4.9%像の5兆360億米ドルとした。財政赤字は前年度比17.7%増の1兆8,460億米ドル。共和党は数週間以内に独自の予算案を発表する構え。連邦議会での熾烈な攻防が予想される。

 歳出では、まず、生活費支援として、低所得者向け家庭用エネルギー支援プログラム(LIHEAP)に41億米ドルを用意。インフレ削減法で提供された130億ドルに基づき、家庭のエネルギー料金の削減、クリーンエネルギーの拡大を進める。低所得者向け水道支援プログラム(LIHWAP)は期限を迎える2023年末以降も一部継続できるよう、予算を積み、州政府の判断で執行できるようにする。またアフォーダブル住宅(手頃な価格の住宅)の供給増に590億米ドルの資金と減税措置を用意。これには、州政府等によるゾーニング支援100億米ドルも含まれる。

 食料分野では、食料安全保障を強化するため、小規模の食肉・食鳥施設に対する時間外使用料の軽減継続を含め、小規模生産者の生産能力を高めるため支援を継続。同時に、動物・植物衛生検査局を通じて外来害虫と人獣共通感染症(動物媒介感染症)に対する安全策も強化する。栄養支援では、健康的で無料の学校給食を900万人の子供に提供できるよう150億米ドル以上を用意、女性・乳幼児・子供のための特別補助栄養プログラム(WIC)に参加する予定の650万人を支援するために63億米ドルも予算化した。

 大学通学学費対策では、中低所得の学生が中等教育への経済的障害を克服するのを支援するため、ペル・グラントの裁量上限を500米ドル増やし、680万人以上の学生に大学のための資金を提供。さらに2029年までに支給額を倍増させる。4年制の学位や高収入の仕事につながる質の高いプログラムを受講する学生には、2年間のコミュニティカレッジ授業料を無料化するための費用5億米ドルも用意する。4年制の歴史的黒人大学(HBCU)、先住民族大学(TCCU)、少数民族教育機関(MSI)に入学した所得12万5,000ドル以下の世帯の学生も授業料を2年間補助する。

 医療費や子育て関連では、インフレ抑制法が延長した保険料税額控除の拡大による年間平均800米ドルの保険料削減を恒久化。医療保険法(ACA)に基づくメディケイドの拡大を採用していない州の市民に対しては、メディケイドのような保険を提供できるようにする。製薬会社に対し薬価削減も求めにいく。高価なジェネリック医薬品に対するメディケアパートDの費用負担を2米ドル以下に制限する政策も盛り込んだ。全米の家庭が良質で安価なチャイルドケアを利用できるよう、チャイルドケア開発ブロック助成金を10億米ドル近く増額し、90億米ドルとした。

 次に、環境対策分野では、まず、気候変動対策予算を前年度比26%像の522億米ドルの裁量的予算を計上する。再生可能エネルギーやバッテリーを中心としたクリーンエネルギー分野には45億米ドルの予算を用意。住宅屋上への太陽光発電パネル敷設を強化する。農家や農村中小企業向けのクリーンエネルギーシステムや省エネ向上のための補助金として3,000万米ドル、融資保証として10億ドルも用意する。農村の系統インフラ増強には最大65億米ドルの融資も行う。公共住宅の省エネ及び気候変動適応にも3億米ドルを提供。

 モビリティ分野では、連邦補助高速道路プログラムに601億米ドル、国家インフラプロジェクト支援プログラムに12億米ドル、都市間旅客鉄道補助金のための連邦・州パートナーシップに5億6,000万米ドルを提供。特に、国の旅客鉄道ネットワークの拡大や電気自動車(EV)充電スタンドの全国展開等の気候変動関連予算を重視。充電および代替燃料供給インフラに15億米ドル、炭素排出量削減プログラムに13億米ドル、PROTECTレジリエンス・プログラムに18億米ドルを用意する。公共調達でも、ゼロエミッション車普及と関連する充電・水素補給インフラ増設のために8億100万米ドルの予算を用意。国内サプライチェーン強化でもエネルギー省に7,500万米ドルを用意する。航空機では、米航空宇宙局(NASA)のグリーン航空構想に5億7000万米ドルを用意する。

 さらにイノベーションでは、気候科学とクリーンエネルギー・イノベーションを支援するため、165億米ドルを用意。そのうち気候変動適応やレジリエンスが51億米ドルを占める。化学プロセスのカーボンニュートラル化に12億米ドル以上、農業の気候変動イノベーション予算にも20億米ドル増の70億米ドルを用意する。さらに、自然資源保全局(NRCS)を通じ、私有農地の保全と農業収量増に向けた炭素隔離農業(カーボンファーミング)の導入に2億800万米ドル増の12億米ドルの予算を計上する。他にも、ゲームチェンジャー型の新規イノベーション分野として、不動産冷暖房のカーボンニュートラル化の研究・開発・実証に2億8,200万米ドル、航空のカーボンニュートラル化研究・開発・実証に5億8,000万米ドル、電源のカーボンニュートラル化の研究・開発・実証に10億米ドル、核融合に10億米ドル、製造とサーキュラーエコノミーの研究・開発・実証に11億ドル、総額40億米ドル以上を用意する。

 公正な移行では、約10億米ドル増の約70億米ドル予算を用意し、影響を受ける石炭、石油、ガス、発電所の地域コミュニティを優先的に支援。気候変動による格差影響の研究支援に1,500万米ドルも用意する。先住民族の気候レジリエンス、適応、移転プログラムにも4,800万米ドルを用意。

 気候変動適応では、洪水ハザードマップに5億ドル以上の予算を投下。これを含め、政府全体では240億米ドル以上を確保する。すでに、インフレ抑制法やインフラ・雇用促進法で、西部の水インフラ対策に約17億米ドルと、旱魃緩和と国内水供給プロジェクトに約46億米ドルも確保されているが、さらに農村部の水事業、節水、海水淡水化技術の開発、水のリサイクル・再利用事業にも予算を積み増す。沿岸および内陸の洪水リスクに対処するための陸軍工兵隊活動予算も19億ドル以上を用意する。健康影響の特定と計画策定にも米疾病予防管理センター(CDC)に1億1,000万米ドルを用意する。

 PFAS(パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル化合物)対策では、2021年に環境保護庁(EPA)が戦略ロードマップを発表した政策の実行に1億7,000万米ドルを用意。さらに、全国の飲料水および廃水インフラの改善に40億米ドル以上を投下する。

 3つ目の柱は移民対策。不法移民の対策と人道的な移民制度の双方を強化する。米国税関・国境警備局(CBP)と移民税関捜査局(ICE)には約250億米ドルを、国境警備を増強。一方で、バイデン政権が抱える最大12.5万人の難民受け入れのため米移民局(USCIS)に8億6,500万米ドル、難民再定住局(ORR)に73億米ドルを用意する。移民の発生源対策では、中米とハイチでの社会支援で10億米ドル以上を用意する。他にも西半球の国際的な移民対策予算として4.3億米ドルを計上する。

 4つ目の柱は対外関係。重要なテーマとして、「中国への対抗」を真っ先に挙げ、インド太平洋地域での米国のプレゼンス拡大に60億米ドルを用意する。まず、ミクロネシア、マーシャル諸島、パラオの自由連合国(FAS)との自由連合協定(COFA)の支援に今後20年間で71億米ドルを投下。インド太平洋地域の関係強化のため、国務省と米国国際開発庁(USAID)に23億米ドル以上の予算を組む。国防総省(DOD)は、米軍の態勢、インフラ、プレゼンス、即応体制構築で91億米ドルを確保する。ロシアを含めた脅威に対しては、強力な核抑止力を維持するため国防総省に377億米ドルを、エネルギー省の国家核安全保障局に238億米ドルを提供する。世界のサイバーセキュリティ対策にも3億9,500万米ドル以上を確保する。世界の民主化・人権支援には34億米ドル以上を用意する。

 バイデン政権が掲げる「世界インフラと投資のためのパートナーシップ(PGII)」には500億ドル以上。PGIIでは、公的資金と民間資金を活用し、気候・エネルギー安全保障、健康・医療安全保障、デジタル接続、男女共同参画、関連交通インフラを推進しつつ、同時に米国企業にグローバルなビジネス機会を創出する。緑の気候基金(GCF)には16億米ドルを拠出。世界銀行の「クリーンテクノロジー基金」には12億米ドルを融資する。グローバルヘルス分野では、感染症の発生への準備・予防・探知・対応に12億5,000万米ドルを用意し、そのうち5億ドルは、グローバル・ヘルス・セキュリティとパンデミック対策への改善を促進する「パンデミック基金」に拠出する。世界のジェンダーのDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)には30億米ドル以上を、食糧支援には約12億ドルを提供する。

 歳入面では、富裕層や大企業への増税を実現することで、今後10年で3兆米ドル(約400兆円)の財政赤字を削減しにいく。まず、富裕層の全収入に対する実効税率がわずか8%しかないことを課題視し、資産1億米ドル超の上位0.01%の超富裕層に対し25%の最低税率を設ける。年間所得40万米ドル以上の世帯に対しては、メディケア医療保険料率も1.2%ポイント引き上げる。さらに、富裕層向けのトランプ減税を廃止し、年収40万米ドル以上の人の最高税率を39.6%に戻す。所得100万米ドル以上に対しては、キャピタルゲインに対しても給与所得と同じ税率で課税する。

 法人税でも、トランプ減税を廃止。トランプ減税では、企業の実効税率を2016年の16%から2018年には平均7.8%に引き下がったが、法人税率を28%にまで引き上げる。おそれでも2017年税制改正前の35%を大幅に下回ると強調した。米国の多国籍企業の海外収益に対する税率も10.5%から21%に引き上げる。薬価交渉でも、医療予算を1,600億米ドル削減する考え。インフレ抑制法で制定された、特定の医薬品の価格がインフレ率を上回った場合にメディケアにリベートを支払うという制度の対象を、市販医薬品にも拡大し、これにより400億米ドルの歳入増を見込む。

 また、石油・ガスへの税制補助や補助金を撤廃し、数百億米ドルの歳入増とする。不動産への税制補助の廃止で190億米ドル、暗号通貨取引への税制補助廃止で、240億米ドルの歳入も確保する。
 
【参照ページ】FACT SHEET: President Biden’s Budget Lowers Costs for Families and Gives the American People More Breathing Room
【参照ページ】FACT SHEET: President Biden’s Budget Lowers Energy Costs, Combats the Climate Crisis, and Advances Environmental Justice
【参照ページ】FACT SHEET: President Biden’s Budget Strengthens Border Security, Enhances Legal Pathways, and Provides Resources to Enforce Our Immigration Laws
【参照ページ】FACT SHEET: President Biden’s Budget Keeps America Safe and Confronts Global Challenges
【参照ページ】FACT SHEET: The President’s Budget Cuts the Deficit by Nearly $3 Trillion Over 10 Years

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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