国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は2月22日、世界の再生可能エネルギーへの投資に関する分析をまとめた報告書の2022年版を発表した。過去最高の投資額となったが、1.5℃シナリオと国連持続可能な開発目標(SDGs)の達成水準には及ばず、先進国と発展途上国の投資格差が大きいと指摘した。
今回の発表は、再生可能エネルギーに関し、技術、セクター、地域、資金源、金融商品ごとに投資動向を分析しまとめたもの。2013年から2020年までの期間を対象とし、2021年と2022年については暫定的なデータを用いた。IRENAとClimate Policy Initiativeが共同で作成し、2018年、2020年に続く3回目の発表となる。
今回の発表では、2022年の世界の再生可能エネルギーへの投資額は過去最高の1.3兆米ドル(約175兆円)となり、2021年から19%、新型コロナウイルス・パンデミック前の2019年から50%増加した。しかし、1.5℃シナリオ達成に向けては2021年から2030年まで平均年間5.7兆米ドル(約770兆円)と約4倍の投資が必要となる。
(出所)IRENA
1.5℃シナリオに沿ったエネルギー転換を達成するためには、化石燃料から再生可能エネルギーへ転換する関連技術へ年間0.7兆米ドル(約94兆円)を投資する必要があるが、化石燃料への投資額は増加傾向と報告。新型コロナウイルス・パンデミックが発生した2020年は2019年の投資額1兆米ドル(約135兆円)から22%減少したが、2021年には0.89兆米ドル(約120兆円)、2022年には0.95兆米ドル(約128兆円)と元の水準に戻りつつある。加えて、パリ協定以降の6年間で一部の世界的な大手銀行は化石燃料への投資額を年平均0.75兆米ドル(約101兆円)増加させたとした。
(出所)IRENA
また、化石燃料事業は補助金の影響が大きいとした。化石燃料の補助金は2013年から2020年の間に世界で総額2.9兆米ドル(約391兆円)となり、2020年にはヨーロッパが中東・北アフリカを抜いて最も補助金額が大きい地域となった。2021年には2020年の0.36兆米ドル(約48兆円)から0.7兆米ドル(約94兆円)に倍増し、2022年はインフレと消費補助金により更に増加していると予想した。再生可能エネルギーとの競争条件を平準化するため、化石燃料への投資の段階的廃止を行う必要があるとする一方で、脆弱な環境下で生活する人々への適切なセーフティーネットの提供を訴えた。
(出所)IRENA
SDGsの普遍的なエネルギーアクセスを達成に向けても、投資ペースと金額の双方が不足していると指摘。2020年末には世界には基本的なエネルギーアクセスのできない人が依然として7.3億人以上、約24億人が伝統的な燃料や技術に頼った調理を行っている。オフグリットの再生可能エネルギーへの投資額は2021年には5.6億米ドル(約756億円)となり2020年から27%増加したが、2021年から2030年までに必要な年間投資額23億米ドル(約3,100億円)に対して大きく不足している。また、オフグリット市場は大手既存企業7社の存在が大きく資本が集中しており、小規模な企業への投資が集まりにくいことを課題として指摘した。
さらに、投資先が電力セクターに偏っていることに言及。2020年には太陽光発電が投資全体の43%、陸上風力発電が35%、洋上風力発電が12%となり、投資全体の90%を占める。太陽熱温水器、地熱ヒートポンプ等の最終用途への投資、輸送部門への投資は遅れており、エネルギー転換を支援するために未成熟な技術や電力以外への投資の必要性を訴えた。
(出所)IRENA
地域別の投資額の比較では、特定の地域や国に集中しており、格差が大きいことがわかった。2022年には投資額の3分の2が東アジア・太平洋地域に集中しており、発展途上国や新興国への投資金額は低い水準となっている。世界の人口の約70%は発展途上国や新興国に居住しているが、2020年の世界の再生エネルギー投資額の15%しか投資されていない。特に、サブサハラ・アフリカは2000年から2020年にかけて、全世界の投資額の1.5%しかなく、2021年の欧州での一人あたり投資額はサブサハラ・アフリカの127倍、北米は179倍と開きが大きい。
(出所)IRENA
同報告書では、再生可能エネルギー導入を目指す途上国への公的基金の役割の重要性を強調し、ファイナンス改革の必要性を訴えた。発展途上国における公的資金が限られていることを前提とし、先進国による発展途上国へのファイナンスを加速させることを求めた。
【参照ページ】Investments in Renewables Reached Record High, But Need Massive Increase and More Equitable Distribution
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