欧州委員会は3月9日、グリーンディール産業計画に沿って、カーボンニュートラル経済への移行を加速させる新たな政策として「暫定危機対応枠組み」の改正を採択した。一般ブロック免除規則(GBER)の改正を採択するとともに、各EU加盟国が実施できる補助金支給ルールを緩和した。EU加盟国の公平性を多少犠牲にしても、各加盟国での迅速な施策導入を優先した形。
【参考】【EU】欧州委、「グリーンディール産業計画」発表。投資拡大で新たな政策確立へ(2023年2月2日)
暫定危機対応枠組みは、ウクライナ戦争への対処のために、2022年3月23日に採択。各加盟国が国家補助規則に基づく補助金支給の規制を緩和した。7月20日には、REPowerEU計画の目的に沿って改訂され、エネルギー価格の高騰に対処するための緊急介入に関する規則と、EUにおけるガス価格の高騰に対処し、この冬の供給安定を確保するための新しい緊急規則に関する欧州委員会の提案に沿って、10月28日に再び改訂されている。さらに今回の改訂の内容は、2022年末から協議を重ね、2月のグリーンディール産業計画の発表の中で、原案が発表。今回最終決定した。
まず、GBERの改正では、カーボンニュートラルに移行していくための重要分野への補助金については、20206年末まで、欧州委員会への事前通知と承認が免除され、自由に実施できるようになった。具体的には、再生可能エネルギーの普及、カーボンニュートラル化プロジェクト、グリーンモビリティ、生物多様性の支援、再生可能水素への投資の促進、省エネの向上等の分野。そして、リスキルやアップスキル関連の300万ユーロ以下のトレーニング支援。電気・ガス等のエネルギー価格対策分野。欧州共通利益の重要プロジェクト(IPCEI)のような複数の加盟国の受益者関与するプロジェクトや、環境支援および研究・開発・イノベーション(RDI)支援については、事前通知・承認対象となる閾値を引き上げ、規制を緩和した。同ルールは、官報に掲載された翌日に発効する。
次に、「暫定危機対応枠組み」では、2025年12月31日の措置として、再生可能エネルギー、バッテリー、工業生産プロセスのカーボンニュートラル化に関連する小規模プロジェクトや、再生可能水素のような成熟度の低い技術に対する補助金支給では競争入札の義務化を撤廃。さらに、あらゆる種類の再生可能エネルギー源の導入に対する支援や、産業プロセスのカーボンニュートラル化のために水素由来燃料に切り替えるための支援の可能性を拡大する。
さらに、バッテリー、太陽光発電、風力発電タービン、ヒートポンプ、電解槽、炭素回収・利用・貯留(CCUS)、主要部品の製造、関連重要原材料の製造とリサイクルの戦略分野では、補助金支給先の規模や地域に応じて、投資費用の一定割合や上限を設けた補助金を支給することを可とした。特に、中小企業(SMEs)および不利な地域に位置する企業には補助金金額の増加も認めた。減税、融資、信用保証での支援については、補助割合を引き上げることも認めた。
補助金支給額ルールの緩和では、EUから投資が流出する現実的なリスクがある場合、加盟国は、受益者が代替地での同等の投資に対して受けられる補助金額(「マッチング補助」と言う)、または企業が欧州経済地域(EEA)に投資を行うインセンティブに必要な額(「資金ギャップ」と言う)のうち、いずれか低い方を提供することも認めた。これにより、EU加盟国は、米インフレ抑制法と同額の補助金を企業に支給することが可能となった。
但し、マッチング補助や資金ギャップでの特別な補助金ついては実施条件を設定した。具体的には、適用される地域支援マップで定義された支援地域で行われる投資、または少なくとも3つの加盟国にあるプロジェクトを含む国境を越えた投資で、投資全体の大部分は少なくとも2つの支援地域(うち1つは最外縁地域または1人当たりGDPがEU平均の75%以下の地域)で行われる場合にのみ可。その上で、環境負荷の観点から、最先端の生産技術を使用することと、補助は加盟国間の投資移転の引金にはならないという要件も課された。
【参照ページ】State aid: Commission adopts Temporary Crisis and Transition Framework to further support transition towards net-zero economy
【参照ページ】State aid: Commission amends General Block Exemption rules to further facilitate and speed up green and digital transition
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