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【国際】IEA、「エネルギー危機下でも世界のCO2排出量増抑制」。再エネ・EV転換背景

 国際エネルギー機関(IEA)は3月2日、2022年の世界のエネルギー関連での二酸化炭素排出量が、クリーンエネルギーの増加により、当初予想よりも少ない増加量に留まったと発表した。世界的なエネルギー危機の中、再生可能エネルギー、電気自動車(EV)、ヒートポンプ、省エネ化等により、石炭回帰による排出量増を抑制した。

 エネルギー源別では、天然ガスでの排出量は、ウクライナ侵攻に伴うロシアからの天然ガス供給の引締めにより、1.6%減少。特に欧州では、13.5%と顕著な減少を示し、ロシアによるガス供給量の急減を、液化天然ガス(LNG)の輸入増で相殺する形で対応した。また北米では、米国の発電やカナダの発電・産業での天然ガス消費量が増加。産業発展や石炭等の代替で発展途上国での天然ガス消費の増加が予想されていたが、アジア太平洋地域では1.8%減少となった。一方、日本では2022年の液化天然ガス(LNG)流入量が3%とやや減少したものの、再び世界最大の液化天然ガス(LNG)輸入国となった。

 石炭は、天然ガス代替として二酸化炭素排出量が1.6%増加。平均増加率は、過去10年間のそれを遥かに上回り、史上最高値に達した。特に中国を除くアジアの発展途上国が4.2%増加と、石炭火力発電での排出量増の主要因となった。

 加えて石油での排出量は、2.5%増加と石炭の上昇率を上回った。要因としては、新型コロナウイルス・パンデミックからの回復により、航空セクターからの排出量が2019年比80%まで回帰したためと分析。航空セクターからの排出量は、石油での排出量増加分の約50%を占めた。

 しかし、石炭と石油での排出量増加の中でも、2022年の世界のエネルギー関連二酸排出量は0.9%増に留まった。2021年の増加率が新型コロナウイルス・パンデミックからの回復で6%だったのに対し、2022年の排出量の伸びは緩やかだった。この背景には、再生可能エネルギー発電の増加や、電気自動車(EV)の拡大がある。

 再生可能エネルギー発電は、2022年の世界的な発電量の増加の90%を占め、太陽光発電と風力発電が各々約275TWhと記録的な増加となった。産業からの二酸化炭素排出量も、中国での経済成長の鈍化や建設の減少、厳格な新型コロナウイルス対策に伴う排出量減少が影響する形で1.7%減少した。また電気自動車(EV)は、2022年に1,000万台以上が販売され、世界の自動車販売の14%超を占める等、躍進した。

 こうした中、IEAは3月3日、歴史的にロシアからの天然ガス輸入に大きく依存してきた東欧5ヵ国と欧州委員会の代表を招集。過去12ヶ月間のウクライナとモルドバからの教訓等を踏まえ、エネルギー安全保障について議論するフォーラム「IEA for EU4Energy」を開催した。

 同フォーラムでは、地域エネルギーシステムの強化に向け、知見の共有や物理的な相互接続等の国際的な協力、天然ガス輸入依存を下げるための風力発電や太陽光発電等への投資の必要性に合意。軍事的侵略等がシステム全体に及ぼす影響を緩和することで、国民を守ることになるとした。

 また同フォーラムでは、緊急対応シナリオを作成するためのデータの重要性や、EU加盟国と東欧5ヵ国によるクリーンエネルギー転換を促進する共同プログラム「EU4Energy」の第2フェーズに関する進捗を強調。欧州委員会は、ロシアのウクライナ侵攻に対するEUのエネルギー政策として、ガス供給元の多様化やクリーンエネルギー移行への投資を紹介した他、東欧諸国とのエネルギー安全保障に関する協力体制等に言及した。

 ウクライナに関しては、ロシア侵攻下でも送電システムが継続稼働しているが、火力発電、原子力発電、水力発電、再生可能エネルギー発電は、ロシアの標的攻撃によって損害を受けたか、ロシア占領地域での稼働となっている。そのため、安全性と持続可能性に重点を置いたインフラ再建を支援するための新たな政策枠組みが必要とした。

 モルドバに関しては、天然ガス輸入への依存が大きい。ロシアのウクライナ侵攻に伴い、従来のウクライナを経由したロシアによる供給から、ルーマニアからの供給に移行する等、長期的な供給元の多様化を進めているが、近隣諸国の経験に学び、再生可能エネルギーと省エネ化に更なる投資を行う必要があると分析した。

【参照ページ】Global CO2 emissions rose less than initially feared in 2022 as clean energy growth offset much of the impact of greater coal and oil use
【レポート】CO2 Emissions in 2022
【参照ページ】Natural gas markets remain tight as uncertainty persists around Chinese LNG demand and further supply cuts by Russia"
【レポート】Gas Market Report, Q1-2023
【参照ページ】IEA for EU4Energy Forum discusses energy security including lessons learned from Ukraine and Moldova
【画像】IEA

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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