EUの二酸化炭素排出量取引市場(EU-ETS)の排出権(EUA)価格は2月21日、1t100ユーロを史上初めて突破し、101.25ユーロをマークした。
EU-ETSは2005年に発足。20ユーロ程度からスタートし、2007年には価格がほぼゼロになった。2008年には一度20ユーロ台にまで戻すも、そこから右肩下がりを続け、2012年から2017年にかけては10ユーロ未満の水準だった。しかし、2018年から20ユーロ強へと上昇。さらに2021年からは大きく上昇を始め、2021年末にはついに60ユーロに到達した。
2022年のウクライナ戦争以降は、さらに上昇し、2月と8月には100ユーロ弱にまで跳ねた。そこから10月には60ユーロ台にまで下がったものの、再度上昇を続け、今回ついに100ユーロを突破した。
今回の上昇の背景には、ウクライナ戦争以降、燃料が一部ガスから石炭へと逆行したことの他、購入期限のタイミングも関係しているとみられている。EU-ETSの対象企業は、前年分の削減目標超過分を4月までに購入しなければならず、そのため年明けから相場が上がりやすい地合いが続いていた。
今回のEUA価格の高騰については、悲観的な見方ばかりでもない。EUはEUA価格が低すぎることが、企業の削減努力を阻害しているとし、長年、価格の引き上げを図る政策を打ち出してきた。今回の100ユーロという水準についても、再生可能エネルギーや水素への転換を加速する上では必要な価格水準と捉える向きもある。その一方で、投機筋が価格を釣り上げたとの観測もある。
エネルギー情勢に関しては、EU理事会は2月21日、EUのエネルギー政策「REPowerEU」を正式に採択した。すでに2月14日に欧州議会も採択しており、2022年5月に欧州委員会が提案した政策が、一部修正されながらもついに成立し、復興・再興ファシリティー(RRF)規則等の改正が決まった。
【参考】【EU】欧州委、REPowerEU採択。ロシア産天然ガス依存度低下へ28兆円。原発も言及(2022年5月20日)
REPowerEUでは、投資と改革の資金調達のために、欧州委員会が200億ユーロの追加助成金を用意。資金源は、イノベーションファンド(IF)が60%、ETSのフロントローディング排出枠が40%。加盟国へは、化石燃料への依存度や、投資価格の上昇を考慮し配分される。また別途、加盟国がEUから融資を受けられる制度も設けられた。特にフロンローディング枠が拡大したことで、EUA価格が押し下げるとみられる。
【参照ページ】EU recovery plan: Council adopts REPowerEU
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