英ビジネス・エネルギー・産業戦略省と運輸省は2月7日、航空のカーボンニュートラル化に向け、航空宇宙技術研究所(ATI)プログラムを通じ、総額1億1,300万ポンド(約180億円)の補助金支給を発表した。
今回、補助金支給先となったのは全部で4つのプログラム。そのうちロールス・ロイス主導のプログラムが3つを占めた。
まずは、ロールス・ロイス主導の水素エンジンシステムテクノロジー(HYEST)に1,480万ポンド。液体水素ガスタービンの燃焼器要素の技術やサブシステムアーキテクチャを開発する。次に、ロールス・ロイスが率いるRACHEL(Robustly Achustion of Hydrogen Engine Layout)に3,660万ポンド。液体水素ガスタービンの主要技術と統合された動力源アーキテクチャを開発する。3つ目が、ロールス・ロイスが主導する液体水素ガスタービン(LH2GT)に3,140万ポンド。水素ガスタービンの液体水素燃料システム納入のための技術を開発する。いずれも水素燃焼駆動型航空機の重要部品となる。
最後が、Vertical Aerospaceが率いるCategory Enhanced Battery Development(CEBD)に3,080万ポンド。Vertical Aerospaceの電動垂直離着陸機(eVTOL)の一部を含む小型航空機用の次世代ハイエンド軽量バッテリーのプロトタイプを開発する。Vertical Aerospaceには、丸紅が日本国内における市場調査や事業参画検討の推進を共同実施するパートナーとして業務提携契約を締結している。また、ロールス・ロイスから、伝導システムの提供を受けることも発表済み。
英政府は2022年7月に、英政府の航空業界を2050年までにカーボンニュートラル化する政策「ジェット・ゼロ政策」を発表。その中で、イングランド地方の空港事業運営では先に2040年までにカーボンニュートラル化する目標を掲げている。今回、運輸省は同時に、2040年までのイングランドの空港運営をゼロエミッションにするという目標を達成する方法について、コンサルテーションを開始した。
【参考】【イギリス】運輸省、ジェット・ゼロ戦略発表。2030年までに英全土で脱炭素路線整備。空軍も(2022年8月1日)
今回の発表は、「ジェットゼロ協議会」の第7回会合で行われたもの。同会合では、ボーイングが、同社の新しいデータモデリングツール「カスケード」のデモを実施。再生可能エネルギー、航空機の更新、将来の航空機と先端技術、運用効率の改善、市場ベースの対策という5つの中核的戦略のシナリオを用いて気候変動の影響に関するライフサイクル全体を計算し、水素、電気、先端技術への投資を継続しながら2050年の公約を達成するためにはSAFが必要となることを伝えた。
英政府は2022年末、5社が運輸省の1億6,500万ポンドの先進燃料基金の一部を獲得し、SAFプログラムも進展。今回の会合もSAFの重要性も認識された。2023年中には、ヴァージン・アトランティック航空が、SAF100%による史上初の大西洋横断飛行を実施する予定。飛行区間は、ロンドン-ニューヨーク間で、英国政府も資金支援する。
【参考】【アメリカ】ボーイング、未来の機体コンセプト発表。SAF活用とともに動力源転換へ(2022年7月23日)
【参照ページ】Over £110 million to unlock zero emission guilt-free flights
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