米ESG投資推進NGOのCeresと米NGOのAs You Sowは1月12日、米国の共和党勢力の強い州で相次ぐ「反ESG投資政策」に関し、地方債の金利払いが増加するとの分析結果を発表した。納税者に対し、「反ESG投資政策」が割に合わないと訴える狙い。
【参考】【アメリカ】ケンタッキー州、「エネルギー企業ボイコット」理由に金融機関11社に対処要求(2023年1月5日)
【参考】【アメリカ】テキサス州、金融機関10社からの投資引揚げ決定。「脱化石燃料は誤り」(2022年8月27日)
【参考】【国際】ブラックロック、TNFDに基づく情報開示を企業に推奨。2023年年次方針で発表(2022年12月23日)
今回の調査は、CeresとAs You Sowの委託を受け、豪気候変動NGOサンライズ・プロジェクトが作成主体となり、実際の分析は米経済・政策コンサルティングEconsult Solutionsが担った。
反ESG投資政策のコストに関しては、米ペンシルベニア大学ウォートン・スクールの先行研究がある。同研究では、最初に反ESG投資政策を始めたテキサス州を題材とし、地方債の発行コストの増加を分析した。テキサス州では2021年9月に反ESG投資州法が施行され、ESG投資を重視する金融機関と州政府との取引を禁止。その結果、JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、フィデリティの5社が地方債の引受から撤退した。
ウォートン・スクールの研究によると、同5社はテキサス州地方債の約35%を引き受けており、5社が撤退したことで、地方債に対する金融会社間の競争が減少。同州法施行後の8ヶ月間の地方債発行320億米ドルにおいて、借入コストが約40bp増加し、発行コストが3億300万米ドルから5億3,200万米ドル上昇したと推定した。
今回の調査では、ウォートン・スクールの研究手法を踏襲し、ケンタッキー州、フロリダ州、ルイジアナ州、オクラホマ州、ウェストバージニア州、ミズーリ州の6州の発行コストへの影響を分析。ケンタッキー州で2,600万米ドルから7,000万米ドル、フロリダ州で9,700万米ドルから3億6,100万米ドル、ルイジアナ州で5,100万米ドルから1億3,100万米ドル、オクラホマ州で4,900万米ドル程度、ウェストバージニア州で900万米ドルから2,900万米ドルの追加発行コストとなったと推計した。
また、今回Ceresは、反ESG投資政策は、地方債の金利上昇に加え、他の面でも州民や地方民に深刻な経済的損害を与える可能性があると指摘。具体的には、州および地方の財務パフォーマンス、年金の投資パフォーマンス、政府系金融機関のパフォーマンスの3つに悪影響のおそれがあるとした。
反ESG投資政策を掲げる州では、保守派政策シンクタンク「アメリカ立法交流評議会(ALEC)」が開発したモデル法案が多数活用されている。すでに共和党の勢力の強い17州以上で、反ESG投資州法が制定されており、今後の増える見通し。
【参照ページ】New Research Shows Legislation to Boycott ESG May Cost State Taxpayers up to $700 Million in Excess Payments
【参照ページ】Texas Fought Against ESG. Here’s What It Cost
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