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【アメリカ】ニューヨーク州、カーボンプライシング制度導入発表。建物でのガス暖房も禁止へ

 米ニューヨーク州のキャシー・ホッホル知事は1月10日、州議会での一般教書演説の中で、同州企業を対象としたカーボンプライシング制度「キャップ&インベスト・プログラム」を創設すると発表した。毎年10億米ドル規模で企業から徴収し、支援が必要な低所得者層の支援に回す。

 今回の制度の対象は、二酸化炭素排出量の多い企業や、暖房や輸送用の燃料を販売する企業。毎年排出枠を設定し、排出量の上限は年々減らされる。排出が排出枠を超過した場合は、排出枠の購入が義務付けられる。同州は2030年までに排出量40%減、2050年までに1990年比85%以上減を掲げており、これらの目標に即す形で排出枠が設定される。

 制度設計・運用では、「手頃な価格」「リーダーシップ」「競争力維持・雇用創出」「不利な立場にある地域社会への投資」「持続可能な未来への資金提供」の5つの原則が定められた。

 手頃の価格は、家庭への影響の考慮で、消費者負担を軽減する一方で、消費者主導の脱炭素化への取り組みに不可欠な資金を確保する。具体的には、省エネ対策、クリーンモビリティ、大気質の改善等。リーダーシップでは、他の州への範を示す。

 競争力維持・雇用創出では、新産業の育成、既存事業のコスト軽減プログラムの設計、ジャスト・トランジション(公正な移行)の分野に資金を回す。また、不利な立場にある地域社会への投資として、キャップ・アンド・インベストメントによる利益の35%以上、できれば目標として40%は、不利な立場にある地域社会への投資に回す。持続可能な未来への資金提供では、事業主の電化支援、電気自動車(EV)充電スタンド、省エネ投資等を挙げた。

 またホッホル知事は同時に、不動産のカーボンニュートラル化に向け、新築工事でのカーボンニュートラル化や、ガスを含めた化石燃料を使用した暖房器具の段階的な販売停止の政策も発表した。

 具体的には、小規模な建物では2025年までに、大規模な建物では2028年までに、現場での化石燃料の燃焼の全廃を呼びかける。また、小規模ビルでは2030年までに、大規模ビルでは2035年までに、化石燃料を使用した暖房機器の新規販売を禁止する政策も打ち出した。実現すると全米で初となる。加えて、大規模ビルでは、エネルギー効率に応じた等級制度も開始する考え。

 足元のエネルギー価格高騰への対策では、年収75,000米ドル以下の約80万世帯に対し、電気料金補助の総額2億米ドルの助成金を支給。また、特に所得の低い2万世帯に対しては、電気料金が年収の6%未満に収まることを保証し、州政府が助成金を支給する「エネルギー・アフォーダビリティ保証」を導入する。同時に、同2万世帯に対しては、「EmPower Plus」制度を実証導入して、断熱材の追加、省エネ性能の高い家電の導入、化石燃料による暖房からクリーンで効率の高い電気への切替え等の設備変更を支援する。

 廃棄物対策では、リサイクル責任を市民から生産者に移す「廃棄物削減・リサイクル・インフラ法」を提案。同州法では、材料別に法定のリサイクル目標を課す考え。

 サプライチェーン対策では、ニューヨーク州での製造に不可欠な素材を供給するための企業を誘致。重要な商品・製品のサプライチェーンを積極的に確保するため。新たな「メイド・イン・ニューヨーク」構想を発表した。州北部と州南部の2カ所に細胞・遺伝子治療(CGT)センターを設立することも提案し、急成長するライフサイエンス分野におけるニューヨークのリーダーとしての地位を確立するとした。

 食品関連では、農家の経済活性化と、ニューヨークのフード・サプライチェーン強化に向けた政策を発表。具体的には、州政府機関による地元産食品の購入量を30%に増やすという大胆な目標を宣言。州政府のニューヨーク州産の食品購入額を現在の400万米ドルから4億米ドルへと100倍に増やす考え。郡や自治体、地元の学校区に対しても、同目標を達成するためのガイダンスが発行される予定。幼稚園・保育園から高校までの学校に対しては、ニューヨーク州産の農作物の使用を促進するための給食提供に、5年間で5,000万米ドルを提供する政策も発表した。

 農家の二酸化炭素排出量削減では、最新の嫌気性バイオディジェスター等の設備導入に対し、5年間還付可能な税控除政策を発表した。農業労働力の確保では、インターンや実習の支援だけでなく、移民や難民の合法的な就労資格取得でも対応する。

 労働対策では、同州の最低賃金を、北東地域の賃金労働者向け消費者物価指数(CPI-W)の前年比の伸びで引き上げるインフレ率連動に切り替える。米国では、他に17州が現在、最低賃金をインフレ等の経済指標に連動させている、もしくは予定しており、そのうち3州は2023年に最低賃金が15米ドル以上となる予定。

 全米で社会問題となっている各州での中絶禁止の動きに対しては、ニューヨーク州としては中絶医療を求める全ての人に安堵の地とすると表明。ニューヨーク州立大学(SUNY)とニューヨーク市立大学(CUNY)のキャンパスで中絶へのアクセスを拡大すると述べた。中絶手術の提供者に対するメディケイドの償還率を引き上げる計画も盛り込んだ。また、ニューヨークで中絶治療を受けようとする人の位置情報や検索履歴等の個人データを保護するための州法案も提案した。

 住宅不足問題では、今後10年間で80万戸を新たに建設する政策を発表した。教育では、新型コロナウイルス・パンデミックで授業時間が減少した問題に対処するため、州内の地区で効果の高い個人指導プログラムを設立に2億5,000万米ドルの予算案を表明。同プログラムは、学区が独自または外部のプロバイダーと提携して設立するもので、3年生から8年生の国語と数学に重点を置く。教育支援全体では、13%増の27億米ドルを追加用意し、240億米ドルを超える予算案を掲げた。

 金融を含めた重要インフラ産業が多い同州でのサイバーセキュリティ対策では、新たに3,520万米ドルの予算案を発表。2024年度以降に、郡や地方自治体への支援予算で、ニューヨーク州合同セキュリティオペレーションセンターの設立にも投じられる。同センターでは、郡や地方自治体のサイバーセキュリティのギャップを評価し、改善を支援する。

【参照ページ】Governor Hochul Unveils Cap-and-Invest Program to Reduce Greenhouse Gas Emissions and Combat Climate Change
【参照ページ】Governor Hochul Announces Transformative Investments in Energy Affordability, Building Efficiency, and Clean Air and Water
【参照ページ】Governor Hochul Announces Economic Innovation Plan To Grow Jobs and Businesses of the Future Across New York State
【参照ページ】Governor Hochul Announces Initiatives to Provide Economic Boost to Farmers and Strengthen New York’s Food Supply Chain
【参照ページ】Governor Hochul Announces Plan to Raise the Minimum Wage Annually, Helping New Yorkers Address the Rising Cost of Living
【参照ページ】Governor Hochul Announces Steps to Strengthen New York State’s Safe Harbor for Abortion Care
【参照ページ】Governor Hochul Announces Statewide Strategy to Address New York’s Housing Crisis and Build 800,000 New Homes【参照ページ】Governor Hochul Announces Agenda to Provide High-Quality Education and Recover from Pandemic Learning Loss
【参照ページ】Governor Hochul Announces Expansion of State’s Major Investments in Cybersecurity Initiatives

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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