国際的なカーボンオフセット基準管理団体米Verraは12月21日、Verified Carbon Standard(VCS)のメソドロジー基準を改訂し、「VCSスタンダード4.4」を発表した。同改訂では、2022年7月から9月にパブリックコメントを実施していた。
まず、地中炭素貯留(GCS)プロジェクト向けの第4.0版では、規制監督、技術的・非技術的プロジェクト設計、非永続性リスク、プロジェクト所有、モニタリング、終了、クレジット期間に関する要件を修正した。クレジット期間では、7年を期限としつつ、5回更新可能で最長42年とした。非永続性要件に関しては、創出量全体の一定量をバッファーとして設定する。
次に、スコープ3排出量に関するクレジット創出で、複数の企業が同一の削減事象で複数のクレジットを創出するダブルカウント問題に対処するため、VCSプロジェクトに対する新たな要件を導入する。具体的には、同一の削減事象で複数のクレジット創出を禁止するとともに、サプライチェーンでのスコープ3削減でのクレジット創出時には、ホームページ等でクレジット創出の旨を公表することを義務化する。これにより、重複チェックができるようにする。
また、植林・再植林・緑化(ARR)及び改良型森林管理(IFM)のプロジェクトでは、長期平均GHGベネフィットの計算式を明確化した。
さらにVerraは12月20日、主要な環境NGOとともに、自然資本観点でのクレジット「自然クレジット」の創出枠組を開発する覚書を締結した。自然クレジットは、国連生物多様性条約第15回締約国会議(CBD COP15)で採択された昆明-モントリオール生物多様性枠組でも言及されており、民間主導でのルール整備が本格化していく。
【参考】【国際】生物多様性条約COP15、昆明-モントリオール生物多様性枠組を採択。ポスト愛知目標も確定(2022年12月20日)
自然クレジットのメソドロジー策定は、マッキンゼーが支援するブルー・ネイチャー・アライアンス、コンサベーション・ファイナンス・アライアンス、コンサベーション・インターナショナル(CI)、グレートバリアリーフ財団、国際自然保護連合(IUCN)、The Biodiversity Consultancy(TBC)が、VerraのSustainable Development Verified Impact Standard(SD VISta)プログラムの下で、自然フレームワーク開発グループ(NFDG)を組成し、評価フレームワークを開発。Verraが基準設定者の役割を担う。
今回の発表によると、自然クレジットの創出対象は、「生物多様性の減少の防止」「生物多様性の再生」「生態系の保全」の3つに関連するプロジェクト。NFDGは、生物多様性の複雑さや場所の特異性を考慮し、堅固で透明性のあるプロセスを開発。先住民族や地域コミュニティに関する社会的インクルージョンや社会的価値も考慮するという。
NFDGは、自然クレジットの枠組開発に際し、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)やSBTN(自然のための科学的根拠に基づく目標)とも連携していくことにも言及した。
Verraはすでに、NFDGへの諮問機関として、自然フレームワーク・アドバイザリー・グループも組成している。
【参考】【国際】Verra、生物多様性クレジット創出メソドロジー策定へ。ネイチャーポジティブ(2022年11月21日)
【参照ページ】Verra Releases Updates to VCS Program
【参照ページ】Verra Signs MOU to Create Nature Crediting Framework
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