国際エネルギー機関は12月9日、クリーンエネルギーを支援するための世界の政府支出が、2022年3月以降に5,000億米ドル以上も増加したとの分析報告書を発行した。新型コロナウイルス・パンデミック以降では、1兆2,150億米ドルにまで増加した。そのうち約95%が先進国政府の予算。
政府支出の国別内訳では、米国が約半分を占め、次いでEUが37%。米国ではインフレ抑制法、EUではREPowerEUの予算で2023年も大規模な予算が組まれており、この傾向は継続するという。他には、イギリス、日本、韓国等でも2023年に追加予算が組まれていることを紹介した。IEAは、現在の政策動向の流れが続けば、2030年には世界各国のクリーンエネルギー予算をさらに50%程度増え、年間2兆米ドル超になると見通した。
また、ウクライナ戦争以降に増えた家庭や企業を対象としたエネルギー費用負担軽減予算は、世界全体で6,300億米ドルだった。但し、支援を最も必要とする世帯や、エネルギー価格高騰の影響を最も受ける企業を対象としたものは約35%に過ぎず、IEAとして課題感を示した。
IEAは12月6日には、再生可能エネルギーに関する年次報告書の2022年版を発行。2022年から2027年にかけて、世界の再生可能エネルギー発電設備容量は2,400GW増加する見込みと説明。現在の中国の全電力設備容量に匹敵する量になるという。今後5年間での電源開発のうち再映可能エネルギーが90%以上を占めることになり、IEAとして、石炭火力発電を上回り、世界最大の電源になることに期待感を示した。
ウクライナ戦争で、今後5年間の再生可能エネルギーの成長率を上方修正したのは、欧州の他、中国、米国、インドと指摘。エネルギー危機に対処するために、従来の計画よりも迅速に再生可能エネルギー拡大政策を実施し、規制や市場の改革を導入しているとした。また、規制改革を進めることで、さらに増加速度を25%加速できるとした。
IEAの新しい報告書によると、2022年の世界の石炭需要はわずかに増加するものの、エネルギー危機の中で過去最高を記録するのに十分な量であり、クリーンエネルギーへの移行を加速するためのより強力な取り組みがなければ、世界の石炭消費は次の年も同様のレベルにとどまると予測している。
加えてIEAは12月16日には、石炭エネルギーに関する2022年の年次報告を発行。2022年の世界の石炭使用量は1.2%増加し、初めて単年で80億tを上回った。中国でも夏の猛暑と旱魃の影響で、冷房需要での石炭火力発電量を押し上がった。今後、成熟市場の減少がアジア新興国の旺盛な需要によって相殺され2025年まで石炭消費量は横ばいになると予測。一方、2025年には欧州の石炭需要は2020年の水準を下回ると予想した。
一方、供給の状況では、石炭主要産出国の中国、インド、インドネシアでも、輸出主導型の石炭プロジェクトに対する投資が急増する兆しはないと指摘。投資家や鉱山会社が、石炭の中長期的な見通しについて慎重になっており、供給は増えていかないと見通した。
【参照ページ】Global government spending on clean energy transitions rises to USD 1.2 trillion since the start of the pandemic, spurred by energy security concerns
【参照ページ】Renewable power’s growth is being turbocharged as countries seek to strengthen energy security
【参照ページ】The world’s coal consumption is set to reach a new high in 2022 as the energy crisis shakes markets
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