国連環境計画(UNEP)と土地劣化の経済学(ELD)は12月1日、自然を軸としたソリューション(NbS)への世界のファイナンス状況を分析した報告書「自然のためのファイナンス状況」の第2版を発行した。大幅な資金動員不足と警鐘を鳴らした。
ELDは、ドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)、国連砂漠化防止条約(UNCCD)、欧州委員会が2011年に立ち上げた国際イニシアチブ。土地の真の価値を意思決定プロセスに組み込み、持続可能な土地利用を促進することを目的としている。
同報告書は、NbSは、気候変動の1.5℃目標達成、生物多様性の喪失防止、土地劣化ニュートラルを実現する有効なソリューションとなるにもかかわらず、NbSへの資金フローは現在わずか年間1,540億米ドルにとどまっている。一方、2025年までに必要なNbSへの投資額は年間3,840億米ドル、2030年までに必要な投資額はさらに年間4,840億米ドルにもなり、大幅に不足している。
NbSへの投資では、現在政府が83%を占めているが、紛争、債務、貧困に関連する財政上の課題により、公的資金を劇的に増加せることは困難。そのため、民間投資が重要となり、現在の年間260億米ドルから大幅に増やす必要があるという。民間投資では、サプライチェーンのサステナビリティへの投資、環境フットプリントを削減するアクションへの投資、オフセットを通じた投資、利用する生態系サービスへの対価の支払い、ネイチャーポジティブな活動への投資で幅広い種類がある。
その反面、公的資金によるネイチャーネガティブの資金フローは、現在のNbS投資額の3倍から7倍にも及び、むしろ悪化させる方向に動いている。とりわけエネルギー分野で多く、年間3,400億米ドルから5,300億米ドル、農業分野では年間約5,000億米ドルと推定さるという。G7諸国が、2030年までに陸上と海洋の30%を保護区化することにコミットしたことは重要だが、さらに資金フローも大きく転じていく必要があるとした。
今回の第2版では、分析対象を海洋生態系にまで広げている。NbS投資全体のうち、海洋のソリューションを対象とするものは9%と極めて少ない。海洋は地球表面の70%以上を占め、二酸化炭素排出量の約25%を吸収し、世界のタンパク質の17%を供給していることから、特に資金フローが重要となるとした。
【参照ページ】Doubling finance flows into nature-based solutions by 2025 to deal with global crises – UN report
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