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【国際】食料・農業向けの脱炭素目標設定ルールが登場。SBTiは事業者向け、B4ICAは銀行向け

 農林水産業でのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)化を金融から支援する「農業における気候インパクトのための銀行(B4ICA)」イニシアチブは12月1日、農林水産業でのカーボンニュートラル目標設定手法に関するガイダンスを発行した。

 同イニシアチブは、2021年11月に国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)、環境防衛基金(EDF)、Partnership for Carbon Accounting Financials(PCAF)が設立。農業分野にファイナンスしている銀行を中心に、ラボバンク、サンタンデール銀行、バークレイズ等の大手銀行が加盟し、ウェルズ・ファーゴ財団も資金支援を表明していた。

【参考】【国際】UNEP FIやWBCSD、銀行主導の農業CO2算出ルール策定イニシアチブ発足。特有の課題に焦点(2021年11月10日)

 農業・食料セクターでのカーボンニュートラル目標設定では、科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)が「森林・土地・農業(FLAG)」ガイダンスを9月に発行している。同ガイダンスでは、長期的な削減目標の他に、5年から10年先の短期目標、二酸化炭素除去(CDR)に関する短期目標、2025年までの森林破壊ゼロ目標、化石燃料からの排出量に関する削減目標も設定すべきとした。また、森林・土地・農業セクターでは、世界全体で2050年までに排出量を74%削減することが求められるということを科学的根拠に基づく削減目標のベースとなることも伝えていた。

 今回のガイダンスは、銀行が融資ポートフォリオでのカーボンニュートラル目標を設定する上で、Net-Zero Banking Alliance(NZBA)の目標設定ガイダンスと、SBTiのFLAGガイダンスの双方の観点からまとめたものとなっている。

 同ガイダンスが提示したポイントは4つ。まず、カーボンニュートラルの対象スコープ。銀行は融資業界での削減対象として、農場での排出量削減を主軸に据えると説明。具体的には、肥料やトラクター等を活用することに由来するスコープ1と2の排出量と土地利用変化による排出量の算出・削減から逃げるべきでないとした。そのうえで、スコープ3排出量もカーボンニュートラル対象に含めることを推奨。加えて、二酸化炭素だけではなくメタン、亜酸化窒素を削減目標に含めること、林業とは分けて目標を設定することを提案した。界全体のGHG排出量のうち、農業セクターは二酸化炭素は21%、メタンは53%、亜酸化窒素は78%を占めている。

 次に、目標設定のためのシナリオの選択。業界横断では、2050年までの投融資ポートフォリオのカーボンニュートラル(二酸化炭素ネット排出量ゼロ)にコミットする銀行のイニシアチブ「Net-Zero Banking Alliance(NZBA)」や国際エネルギー機関(IEA)がシナリオやパスウェイを定めているが、農業セクター向けには不完全との認識を示した。そのため、融資ポートフォリオの構成に応じて、地域別や農産物の種類にけ、目標設定することを推奨した。

 原単位と総量の目標選択では、NZBAのガイダンスでは、総量と原単位の双方の目標設定を選択肢として提示しており、今回各々のメリットとデメリットも整理した。総量目標は、世界全体でのカーボンニュートラルを達成する上で適しているといえるが、食糧不足に対処するための食糧増産そのものを阻害しかねないとの懸念も伝えた。他方、原単位目標は、農場レベルでの削減努力を加速できるが、全体の削減目標を設定する換算が難しいことがデメリットとした。

 そこで、今回3つの方針を設定した。1つ目は、サブセクター単位での総量もしくは原単位での目標設定。例として、科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)が9月に発行した「森林・土地・農業(FLAG)」ガイダンスで用いられているサブセクター分類の活用を挙げた。次に原単位目標の設定では、金額分母ではなく、重量等の物理的指標を分母にすることを推奨した。総量目標設定では、全体の削減割合もしくは、シナリオに基づく農業への転換完了割合で設定することを推奨した。

 3つ目は、排出量の算出。GHG排出量削減目標を達成するためには、より精度の高いデータ収集が必要となる。農家への負荷を考慮したデータ収集のため、支援する農家へのアプローチだけではなく、外部データの活用の検討を推奨した。

 最後に、ステークホルダーの巻き込み。農業セクター全体の関係者に対し、持続可能な戦略を採用するよう伝え、農業セクターのカーボンニュートラル達成に向けた資金調達の支援を行う必要があるとした。同ガイダンスで提案している農場の目標設定だけではなく、バリューチェーン全体や特定の農作物の目標設計の検討等を訴えた。

 同イニシアチブは今後、意思決定とリスク管理のフレームワークの策定、データ収集と測定方法の標準化やデータの質とアクセス性の向上させる施策・ツールの検討、補足ガイダンスの作成を行う予定。

【参照ページ】An Introductory Guide for Net Zero Target Setting for Farm-Based Agricultural Emissions
【参照ページ】The SBTi launches the world’s first standard method to cover land-related emissions and removals

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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