欧州委員会は11月30日、欧州グリーンディール戦略のサーキュラーエコノミー・アクションプランの一環として、容器・包装に関する新たなEU規則案を発表した。今後、EU理事会と欧州議会の審議に入る。
欧州委員会は3月、「サステナブル製品イニシアチブ」を発表。費者訴求や製品規格のルール刷新に向け動き出していた。今回のEU規則は具体的な法改正の内容を示したもの。サーキュラーエコノミーの観点から、使用量削減と質の高い「クローズド・ループ」に関する規制導入に加え、バイオプラスチック、生分解性プラスチック、堆肥化可能プラスチックについても、消費者を誤認させないよう要件を定める。
【参考】【EU】欧州委、「サステナブル製品イニシアチブ」発表。消費者訴求や製品規格のルール刷新へ(2022年4月2日)
まず、使用量削減と質の高い「クローズド・ループ」では、再利用や詰替えを徹底した上で、2030年までに全ての容器・包装をリサイクル可能にするという目標を設定。さらに、バージンプラスチックの消費量を減らし、再生プラスチックの使用を増やしに行く。
具体的なEU規則の内容としては、2040年までにEU加盟国一人当たりの包装廃棄物を2018年比で15%削減。これにより従来の予測からEU全体で約37%の廃棄物削減を実現する。また、企業は消費者に対して、テイクアウト品やEコマースでの配送等、製品の一定割合を再利用可能または詰替え可能な包装で提供することを義務化する。包装形態の規格化や再利用可能な包装の明確な表示ルールも今後固める。さらに、外食店での使捨て容器・包装、果物や野菜の使捨て包装、ホテルでのシャンプーのミニチュアボトルやその他のミニチュア包装等を禁止する。再生プラスチックの使用では、プラスチック容器・包装の含有割合でも義務基準を設定する。
これらの目標達成では、容器・包装の素材や設計の変更や、義務的デポジットリターン制度を各加盟国の判断で導入されることが想定されている。これらの新ルールによる二酸化炭素排出量削減効果は、2030年までに2,300万t減。水の使用量も110万m3減。経済と社会が被る環境破壊のコストでも64億ユーロ減と試算した。さらに経済効果では、2030年までに再利用部門で60万人以上の雇用が見込まれ、特に中小企業で追い風とした。企業がコスト削減した分を消費者に還元すれば、EU一人当たり年間100ユーロ近くが節約できるとした。
バイオプラスチック、生分解性プラスチック、堆肥化可能プラスチックの要件では、まず、バイオプラスチックは、原料の持続的な調達を義務化。また消費者訴求では、「バイオプラスチック」や「バイオベース」を単純に謳うことを禁止し、バイオプラスチックの含有割合を示すことのみを認める。
生分解性プラスチックでは、生分解される環境と時間のラベル表示を義務化。加えて、使い捨てプラスチック指令の対象となるものを含め、使い捨てされる可能性のある製品には、生分解性プラスチックを訴求することを禁止する。
堆肥化可能プラスチックでは、用途を、堆肥の質に悪影響を及ぼさず、適切な生ごみ収集・処理システムがある場合に限定。具体的には、ティーバッグ、フィルターコーヒーのポッドと蓋、果物や野菜のシール、非常に軽いビニール袋にのみ許可される予定。また、EUの産業用堆肥化認証の取得と表示も義務化する。
欧州委員会は、EUでは、1人当たり年間約180kgの包装廃棄物が発生しており、EUで使用されるプラスチックの40%、紙の50%が容器・包装用と指摘。さらに、現行ルールのままでは、2030年までに容器・包装廃棄物が19%、プラスチック容器・包装廃棄物が46%増加すると見立てていた。
【参照ページ】European Green Deal: Putting an end to wasteful packaging, boosting reuse and recycling
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