大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)は11月21日、年次総会を開催。大西洋海域でのクロマグロの管理方式(MP)制度の導入を史上初めて採択した。また、南大西洋アオザメの新しい保全措置も決定した。
ICCATは今回、大西洋東部と地中海のクロマグロ、大西洋東部と西部カツオ、大西洋メカジキ、北東大西洋ポルベーグル鮫の4種について完全科学的資源評価を実施。合計で13の新たな勧告と4つの決議が採択された。
特に画期的だったのは、クロマグロでのMP導入の決定。管理方式(MP)とは、事前に取極めた計算手法に基づき、TAC(総許容漁獲量)を半自動的に決定する枠組み。科学データを基にTACを設定できることから、政治的合意を容易にするとともに、科学的な資源量を実効的に管理できることが期待されている。水産資源でのMP導入では、国際捕鯨委員会(IWC)が早くから導入が決まっていたが、まぐろ・かつお類での導入は遅れていた。だが、2011年に、みなみまぐろを管理するみなみまぐろ保存委員会(CCSBT)でMP導入が決定し、3年毎にTACを見直す体制ができていた。
そこでICCATは、大西洋クロマグロのTAC(総許容漁獲量)でのMP導入をついに採択。背景には米国とEUが導入に向けた調整を進めていたことが大きいとみられている。同MPでは、2023年から2025年までの年間TACを、大西洋西部で2,726t、大西洋東部と地中海で40,570tと決定した。みなみまぐろ以外のまぐろ・かつお類は、4つの地域漁業管理機関(RFMO)が地域毎に管理し、各々のRFMOに各国が加盟している。今回の決定により、ICCAT海域で、日本の2023年からの2025年の年間TACは漁獲枠は、2022年比295t増の3,114tとなった。
また今回ICCATは、南大西洋アオザメでも、2023年からの保全策を決定。直ちに乱獲をやめ、60%から70%以上の確率で2070年までに最大持続収量(MSY)を維持するのに必要な資源量回復を行うことを決めた。2024年に新たな科学委員会(SCRC)が助言を行うことも決め、それまでの間の漁獲死亡量を最大1,295tとした。
北大西洋と南大西洋のメカジキでも新たな管理措置で合意。北大西洋メカジキは、ロールオーバーが合意され、2023年のTACは、SCRSの助言に従い、 2022年レベルと同じ13,200tで決定。南大西洋メカジキでは、2023年から2026年まで10,000トンのTACを決定した。
ビンナガマグロでは、ICCATが2036年までの15年間の資源量回復計画を実施する地中海ビンナガマグロは、2,500tのTACで合意。また、南大西洋ビンナガマグロでは、2023年から2026年までTAC28,000tで合意した。
熱帯マグロに関しては、複数年保存管理計画に関する広範な議論が行われたが合意に至らず。そのため、2023年のTACを62,000tとし、72日間のFAD(人工浮き魚礁)漁を停止する現行措置の単純なロールオーバーが採択された。メバチマグロとキハダマグロでも、幼魚の漁獲死亡率を低減するため、2023年の72日間禁漁とFADの使用制限を続行することが決まった。
他にも、違法・無報告・無規制(IUU)漁業への対策として、国内法に基づく対策を、漁業を営む個人や法人だけでなく、船舶運航者、船舶所有者、金融サービス提供者等も対象とすることでも合意した。
絶滅危惧種対策では、米国政府主導でウミガメへの影響を緩和するための漁具や餌の変更に関する初の措置を採択。ブラジル、カナダ、ガボン、エジプト、トルコ、EUも提案国に加わった。具体的には、大西洋の浅瀬延縄漁業での円形フックの使用等、科学的根拠に基づく緩和策を求めた。同様の措置は、米国政府の提案により、他の地域漁業管理機関でも採択されている。
気候変動対策では、米国政府主導での提案があり、2023年に科学者と政府との合同会議を開催し、重要な作業を開始すること決定。特に、利用可能な情報、データギャップ、研究ニーズを特定しにいく。
【参照ページ】ICCAT agreed the implementation of a Management Procedure for Atlantic bluefin tuna and a new conservation measure for tropical tunas
【参照ページ】U.S. Leadership at ICCAT Contributes to Adoption of Historic Management Procedure for Atlantic Bluefin Tuna
【参照ページ】EU achieves significant results at annual meeting of ICCAT
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