米ハリス副大統領は11月18日、訪問中のタイで、東南アジア地域でサステナビリティの分野での経済協力関係を深化させる3つの政策を発表した。2021年にG7サミットで発足した世界インフラ・投資パートナーシップ(PGII)、11月19日にAPEC首脳会議で正式採択した「バイオ・サーキュラー・グリーン(BCG)経済バンコク目標」、米バイデン大統領が5月に発表した「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の流れに乗り、ASEAN(東南アジア諸国連合)での影響力を強化しにいく。
気候変動分野では、まず米エネルギー省が国連気候変動枠組条約第26回グラスゴー締約国会議(COP26)で発表した「ネットゼロ・ワールド・イニシアチブ」にタイが参加することが決まった。同イニシアチブには、現在、アルゼンチン、チリ、エジプト、インドネシア、ナイジェリア、ウクライナが参加。参加国は、米国政府からカーボンニュートラル型の産業転換に向けた支援を積極的に受けられる。今回、米政府は、電気自動車(EV)、太陽光発電、省エネ等の分野を協力分野として挙げた。
次に、小型モジュール炉(SMR)型の原子力発電所のタイへの導入支援「小型モジュール炉技術の責任ある使用のための米国の基礎インフラ(FIRST)プログラム・パートナーシップ」。
3つ目が、気候スマート農業。タイ政府の地域気候ハブ建設に2,250万米ドル(約32億円)を拠出。タイで農家3万人、農地2万4,000haに気候スマート農業を導入することを目標とし、イノベーションの加速で官民連携する。
4つ目が、タイでの物流でのEV導入支援で、タイ運輸省に200万米ドル以上(約3億円)のシードマネーを提供し、20億米ドル(約2,800億円)以上の資金動員効果を狙う。プラスチックリサイクル施設も支援する。
次の柱は、社会分野。まず、ヒューマントラフィッキング(人身売買)の撲滅。米国務省が助成金を支給し、タイ人身売買法の履行状況を高めるため職員研修を実施する。続いて通信セキュリティ強化。5Gサイバーセキュリティ分野の地域ワークショップ開催や、タイの国家サイバーセキュリティ機関(NCSA)への支援継続やサイバー犯罪メンタープログラムの設立等を決めた。健康分野では、タイのチョンブリ県内の東部経済回廊で、癌センターの建設に約60万米ドル(約8,000万円)を提供する。
3つ目の柱は、タイ、ミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナムの5カ国を見据えた「メコン地域」の支援。まず、2019年に発足した「日米メコン電力パートナーシップ (JUMPP)」を通じた水力発電以外の再生可能エネルギー導入支援。メコン地域5ヶ国の系統接続も見据え、規制、市場メカニズム、技術等を支援する。
また、メコン地域での女性起業家支援プログラム「WEインスパイア」の立ち上げに70万米ドル以上、メコン川下流域の持続可能な成長と水の安全保障を促進する研究促進「メコン次世代科学者」プログラムに50万米ドル以上、メコン-ミシシッピ姉妹河川パートナーシップに50万米ドルを拠出する。ワン・ヘルス・アプローチの研究支援「メコン・ワン・ヘルス・イノベーション・プログラム」の立ち上げも支援する。
【参照ページ】FACT SHEET: Vice President Harris Announces New Initiatives to Strengthen U.S.-Thailand Alliance and to Support Mekong Sub-Region
【参照ページ】FACT SHEET: Vice President Harris Announces New U.S. Support for Clean Energy in the Mekong Region
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