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【国際】COP27「シャルム・エル・シェイク実施計画」採択し閉幕。ロス&ダメージ対策で歴史的成果

 第27回国連気候変動枠組条約シャルム・エル・シェイク締約国会議(COP27)は11月20日、「シャルム・エル・シェイク実施計画」を採択し、閉幕した。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局は、「損失・損害(ロス&ダメージ)の資金提供で画期的な合意となった」と表現した。

 シャルム・エル・シェイク行動計画では、ロス&ダメージの対策のため、専用基金の創設と、新たな資金アレンジ手段の確立の双方で合意。2023年のCOP28で、専門基金と資金アレンジの双方の資金源や運用方法を固めるための準備機関として「移行委員会」を設置することも決めた。第1回会合は2023年3月末までに開催される。移行委員会は、12月15日までに24人を指名。先進国から10人。発展途上国から14人とし、地域配分はアフリカ3人、アジア太平洋3人、中南米3人、島嶼国2人、後発発展途上国2人、その他の発展途上国1人。

 ロス&ダメージは、気候変動適応の分野の一つ。従来の適応では、将来起こりうる気候変動の悪影響への対策面に焦点が当てられていたが、今回ロス&ダメージで大きく前進したということは、それだけ気候変動の悪影響がすでに現実になっているということも意味している。

 加えて、気候変動に脆弱な発展途上国への技術支援を強化するため、2019年のCOP25で設立された政府、国際機関、NGOで連携する「サンティアゴ・ネットワーク」を機能的に運用させるための制度的取決めでも合意した。2023年までに本部の所在地を決定し、組織的なミッション遂行を実現する。

 また従来型の気候変動適応では、COP27の閉幕までに、各国政府等から適応基金(AF)に2.3億米ドルの追加資金拠出の発表があり、同実施計画は歓迎を表明。COP27議長国エジプト政府が11月8日に発表した「シャルム・エル・シェイク適応アジェンダ」の内容も踏まえ、最も支援が必要な国への支援を厚くしていく。財務常設委員会に対しては、COP28での検討のため、適応資金の資金を倍増するための方策を検討する報告書の作成も要請した。別途、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、COP27の中で、今後5年以内に全人類に早期警戒システムの恩恵を受けられるようにするプログラムに総額31億米ドルを投じることを表明しており、同実施計画でも歓迎した。

【参考】【国際】COP27、2030年までに気候レジリエンスを全人類に。農業、NbS、金融、インフラ等(2022年11月10日)

 気候変動緩和に関しては、1.5℃目標を達成するには、2030年までに世界全体で二酸化炭素排出量を2019年比43%削減が必要と確認。最新の国別削減目標の積み上げでは、2030年に2019年比で0.3%削減にしかならないことにも深刻な留意を示した。そのため、各国の事情に留意しつつも、2023年末までに2030年目標を再検討するよう各国政府に要請した。

 そのため、各国政府に、低排出エネルギーシステムへ移行するための技術開発、導入、普及、政策採用を加速することも要請。クリーン電力及び省エネの展開を迅速に拡大し、削減努力のない(Unabated)石炭火力発電の段階的削減及び非効率な化石燃料補助金の段階的削減に向けた努力を加速するとした。こちらの表現はCOP26から変わっていない。

 但し、昨今のエネルギー危機に触れ、重要となる今後の10年間で、再生可能エネルギーへの公正な移行(ジャスト・トランジション)を加速することを含め、エネルギーシステムをより安全、信頼性、回復力のあるものに急速に変革する緊急性を強調。低排出ガスと再生可能エネルギーを含むクリーンエネルギーミックスを、各国の事情に合わせてあらゆるレベルで強化することでも合意した。エネルギー以外でも、気候変動緩和でのジャスト・トランジションの重要性も強調されている。

 また、パリ協定の目標達成のためには、森林をはじめとする陸域および海洋の生態系が吸収源および貯蔵庫として機能することや、社会・環境セーフガードを確保しつつ生物多様性を保護することを含め、自然および生態系の保護、保全、再生の重要性も強調した。

 ファイナンスについては、低炭素経済への転換で、今後毎年4兆米ドルから6兆米ドルのファイナンスが必要となるとの表現を盛り込んだ。資金確保では、政府、中央銀行、銀行、機関投資家等の金融関係者を巻込み、金融システムの構造とプロセスを迅速かつ包括的に変革することが必要とした。特に、先進国が約束した2020年までに共同で年間1,000億米ドルの資金を動員するという目標が達成されてないことに深刻な懸念を表明し、先進国は目標を達成すべきとした。国際開発金融機関にも、イノベーションを促進しインパクトを加速するため、民間資金の動員も含め、譲許的資本やリスク資本の増やすよう求めた。また、2024年に「気候変動資金に関する新たな集団的定量化目標」を設定するための審議を継続することも決定した。

【参照ページ】COP27 Reaches Breakthrough Agreement on New “Loss and Damage” Fund for Vulnerable Countries

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