国際環境研究所ネットワークのクライメート・トランスペアレンシーは10月20日、G20諸国の化石燃料に対する補助金や資金拠出状況を分析したレポートを発表した。2015年から毎年発行されており今回が8回目。
今回の報告書では、経済協力開発機構(OECD)のデータを活用し、G20諸国政府の化石燃料補助金が2020年に1,470億米ドル(約21兆円)に減少したものの、2021年は29%増の1,900億米ドル(約27兆円)にまで伸長と批判。さらに2022年も増加傾向にあるという。とりわけ、化石燃料生産への補助金が2021年に過去最大級の640億米ドル(約9兆円)にまで増大。背景には、新型コロナウイルス・パンデミックからの経済回復や、ロシアのウクライナ侵攻がエネルギー価格の高騰があるという。
それに伴い、二酸化炭素排出量も増加。G20諸国のエネルギー由来二酸化炭素排出量は、2020年に前年比4.9%減だったが、2021年には5.9%増。特に一人当たり排出量が大きくリバウンドしたのは、ブラジル、トルコ、ロシア等の新興国だった。2021年に化石燃料補助金額が多かったのは、中国、インドネシア、英国。
一方、2016年から2021年の間に、すべてのG20諸国で、電源構成における再生可能エネルギーの割合が増加。英国で67%増、日本で48%増、メキシコで40%増だった。増加率が最も低く、いずれも5年間のG20平均である22.5%を大きく下回るのは、ロシアとイタリア。だが、G20諸国全体での2021年の再生可能エネルギー比率は前年のままだった。
一次エネルギー供給量全体での再生可能エネルギー割合では、インドネシアで7.8%増、英国で4.7%増、トルコで3,9%増、ドイツで3%増。G20各国すべてで増加した。増加率が最も低いのは、サウジアラビア、ロシア、南アフリカ。
年間1,000億米ドルの気候変動資金動員を目標としている先進国8ヶ国に関しては、クライメート・トランスペアレンシーが過去の排出量や経済力、人口を加味し独自に在るべき金額を設定。結果、達成していたのは、日本、ドイツ、フランスのみだった。
気候変動による損失では、2021年にサービス業、製造業、農業、建設業でのGDP当たり損失額では、最大がインドでGDPの5.4%。そしてインドネシア、サウジアラビアと続いた。
これと関連し、インド政府は、国連気候変動枠組条約第27回シャルム・エル・シェイク締約国会議(COP27)での政府交渉で、議長国エジプト政府に対し、石炭だけでなく化石燃料全体の廃止を合意文書に盛り込むよう要請したことが、11月12日に明らかとなった。背景には、石炭依存度の高いインドが、集中砲火の不利になる状態を避けるため、化石燃料全体の削減を逆に提唱することで、他国の削減にも目を向けさせる狙いがあるとみられている。2021年のCOP26では、合意文書には、石炭使用を「段階的に廃止する」と原案にあったが、中国、 インド、米国が土壇場で「段階的に削減する」に変更を要求し、変更されていた経緯がある。
インド政府は11月14日、COP27の場で、ブペンダー・ヤダブ環境・森林・気候変動相が、長期低排出開発戦略を発表。電力部門では、再生可能エネルギーを活用したグリーン水素の国際的ハブ化と、原子力発電設備容量の3倍計画を示した・運輸部門では、バイオ燃料、グリーン水素、電気自動車(EV)を最大限活用し、バイオエタノール混合率を2025年までに20%にする目標を示した。工業部門では、高レベルの電化、サーキュラーエコノミー拡大につながる省資源の向上とリサイクル等を掲げた。インド政府は同戦略を、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に「長期低排出開発戦略」として公式に提出済み。
【参照ページ】Climate Transparency Report 2022
【参照ページ】India Submits its Long-Term Low Emission Development Strategy to UNFCCC
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