国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)と国連開発計画(UNDP)は10月、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の活動を支援するため、金融機関側の準備状況を評価した結果を発表した。自然資本や生態系、生物多様性に関するイニシアチブが乱立する状態を危惧し、TNFDが議論をリードすることを求めている金融大手の状況が浮き彫りとなった。
今回の報告書からは、金融機関の間でも、自然災害のリスク、影響、機会、対策の必要性に対する認識が高まっている状況を確認。また、TNFDフォーラムには、わずか1年で、600社へと参画機関が3倍に拡大。現在世界20カ国の金融機関が、UNEP FIのパイロットプロジェクトを通じ、TNFDのβ版の実証テストを行うことにもコミットしている。
金融機関が自然資本への関心を高めている要因では4つを挙げた。まず、EUのサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)、英国の気候関連財務情報開示ルール、気候変動に関する金融リスクを検討するための中央銀行・金融当局ネットワーク「気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(Network for Greening the Financial System;NGFS)での作業等、規制側の状況の変化がある。
そして、自然への影響や依存度が高いセクターや地域、さらには生態系の乱開発や気候変動の複合的な影響で苦しんでいるセクターや地域での投融資や投資ポートフォリオへの実際のエクスポージャー懸念。
3つ目は、グリーンファイナンスでの事業機会とレピューテーション。そして、気候変動の文脈でも自然を軸としたソリューション(NbS)への重要性認識が高まってきていることを挙げた。
但し、現状では、自然資本の動向を意思決定プロセスに統合できている金融機関は、「アーリームーバー」に限られており、課題としては、内部リソースと能力の不足、自然関連リスクがもたらす財務影響への理解欠如の声が上がった。経営陣自身のキャパシティビルディング不足を懸念する声も多かった。相次ぐ課題への「コミットメント不足」の声もあった。
構造的な課題としても、自然資本関連のイニシアチブが増加するほど、社内リソースを効率的に活用するため「様子見」をする金融機関が増えるという問題も指摘。金融機関にとってフレームワークや規制レベルでの不確実性も高いことが、足踏みを誘発していることもみえてきた。そのため、TNFDが積極的な関与戦略を通じ、自然資本関連の追跡、行動、報告の共通フレームワークの定義をリードすべきという意見に帰着してきた模様。特に、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)と同様の手法を採っていることから、TCFDで組織意思決定の整備ができてきている金融機関にとっては、TNFDは活用しやすいという反応だった。
金融機関がTNFDに求める意見としては、気候変動と自然資本に関する包括的な情報開示の簡素化、ケーススタディの紹介、主要国政府やIFRS財団の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)等での全体での一貫性整備、最低限必要な事項を整理したガイダンス作成等が上がった。
【参照ページ】TNFD Financial Market Readiness Assessment
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