世界銀行は10月5日、世界の貧困状況に関する包括的な分析レポートを発表した。今後10年間で発展途上国の劇的な経済成長が実現できなければ、国連持続可能な開発目標(SDGs)の1つである極度の貧困をなくすことはできないと訴えた。
今回の発表は、2020年までの貧困と不平等の傾向を分析し今後の財政政策を提案したもの。まず最貧困層を1日2.15ドル未満で生活する人々と定義。新型コロナウイルス・パンデミックにより2020年だけで最貧困層が約7,000万人増加し、増加幅が1990年以降の観測史上で最悪だった。2020年末の最貧困層は全体で約7.2億人。
状況では、最貧困層の下位40%の所得損失は平均4%、富裕層の上位20%の所得損失の2倍。2020年は世界的な不平等が過去30年間で初めて拡大した。今後もロシアによるウクライナ侵攻、インフレ、通貨下落等により貧困層への影響はますます増加する見通し。
新型コロナウイルス・パンデミック時の財政政策についても言及。財政政策がなければ発展途上国における貧困率はさらに2.4%高くなっていたと分析した。財政政策の効果は、国の経済レベルにより大きく異なり、先進国では拡大を回避できた一方、高中所得国では貧困層への影響を約50%、中低所得国は25%しか回避できなかった。
また、SDGsの目標達成には、最貧困層の60%を占めるサブサハラ・アフリカの一人あたりGDPを毎年9%成長させる必要がある。新型コロナウイルス・パンデミック以前の成長率は平均1.2%であり、極めて困難な課題と指摘した。
今後の政策提案は3つ。まず、対象を絞った現金給付の増加。例えば、中低所得国のエネルギー補助金の半分は、エネルギー消費量が多い上位20%の富裕層を支援してしまっている。貧困層の支援には現金給付がはるかに効果的だとした。
次に、長期的な成長を促す政策の展開。教育、研究開発、インフラプロジェクト等の長期的に高いリターンが見込める投資を実施する必要があるとした。最後に、貧困層に影響を与えないような国内歳入の確保。具体的には、固定資産税、炭素税は貧困層の影響を与えにくく、所得税、法人税の引き上げの際には影響を相殺できるよう現金給付を同時に行うべきだとした。
【参照ページ】Global Progress in Reducing Extreme Poverty Grinds to a Halt
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