JFEホールディングス傘下のJFEスチールは9月1日、「カーボンニュートラル戦略説明会」を開催。その中で、岡山県の西日本製鉄所倉敷地区の高炉1基を2027年にも休止し、大型電炉を導入する方針を正式に発表した。仙台市の仙台製造所の電炉も24年に増強する。
同社は、2021年5月に2050年カーボンニュートラルを宣言した際、電炉での高品質製鉄の方針を披露していた。今回はその具体策の発表となった。説明会の中では直接還元鉄を活用した電炉の不純物除去技術開発も計画の中に盛り込んだ。千葉地区に月量10t規模の⼩規模試験電気炉を建設し、2030年代前半に大規模炉の実装を見込む。
【参考】【日本】JFE、2050年カーボンニュートラル宣言。CCUが柱。国内鉄鋼生産は量から収益性に転換(2021年5月8日)
電炉での高品質製鉄では、原料となる鉄スクラップでの不純物の除去が重要となるが、同社は同日、伊藤忠商事とアラブ首長国連邦(UAE)鉄鋼大手エミレーツ・スチールと共同で、純度の高い還元鉄を生産するプロジェクトを発表。還元鉄を鉄スクラップと混ぜることで、全体の純度を引き上げる考え。エミレーツ・スチールでの還元鉄生産では、還元材で石炭の替わりに天然ガスを用い、さらに石油増進回収(EOR)型の炭素回収・利用・貯留(CCUS)も導入する。将来的には、水素還元製鉄への置換も視野に入れる。倉敷地区に月量3tの小型炉を建設し、還元鉄を混入させた電炉製法の確立を図る。
同社は今回、水素還元製鉄の本格実装の時期は、2040年代中頃と設定。そのため、電炉での高品質製鉄が当面の鍵を握る。
一方、日本製鉄はすでに兵庫県姫路市の瀬戸内製鉄所・広畑地区に新設した電気炉の総合試運転を6月下旬に開始している。世界初の電炉一貫での電磁を含めた高級鋼板生産の商業運転を、2022年中にも始める予定。生産能力は月量約6万t。
日本製鉄は、懸案だったトヨタ自動車との間で、2022年10月-2023年3月の車用鋼材を、過去12年度で最大幅となる1t当たり約4万円の引き上げで合意し。上昇幅は20%から30%の規模。また、日本製鉄は9月1日、中井徳太郎・前環境事務次官を顧問に招聘した。
日本の鉄鋼大手は、長年、高炉重視の姿勢を崩さず、電炉での高品質製鉄には長年反対の立場をとっていた。しかし、2020年10月に当時の菅義偉首相が2050年カーボンニュートラルを宣言し、経済産業省が電炉を政策として大きく掲げたことから、業界全体が動き出した。
【参照ページ】JFEスチール カーボンニュートラル戦略説明会 [2022年9月1日]
【参照ページ】鉄鋼業界のグリーン化に向けた低炭素還元鉄のサプライチェーンの構築について
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