環境・健康科学者らは8月8日、現在の人間の感染症のうち50%以上が気候変動の影響を受け悪化していくリスクを抱えていると分析した論文を発表した。あらためて二酸化炭素排出量削減の必要性を訴えた。
同論文は、学術誌「Nature Climate Change」に掲載された「Over half of known human pathogenic diseases can be aggravated by climate change」。科学論文77,000本以上をレビューしたメタ分析論文で、そのうち830の論文には、特定の疾病に影響を与える気候現象が場所や時間を特定して記載されていた。分析対象となった気候現象には、大気の温暖化、熱波、旱魃、山火事、豪雨、洪水、嵐、海面上昇、海洋温暖化、土地利用変化等。
そこで研究者らは、全ての経路を示すインタラクティブなマップを作成した。結果、375の感染症のうち、58%に相当する218の感染症が気候変動の影響を受ける可能性があることがわかった。
経路は大きく4つに分類される。まず、宿主の動物や生物が気温や降水パターンの変化で生息域を移動させ、人間との接触が増加する。蚊によるマラリアやデング熱の感染拡大はこれに含まれる。
2つ目は、人間自身の行動パターンの変化。例えば、熱波が発生すると、水中での行動時間が増え、水系伝染病の発生が増加する。2014年にスカンジナビア北部で発生した熱波の後、スウェーデンとフィンランドでビブリオ関連感染症が大幅に増加した例が挙げられている。
3つ目は、病原体の耐熱性や繁殖力の強化。例えば、大雨や洪水で蚊が大量繁殖し、黄熱病、デング熱、マラリア、西ナイル熱、リーシュマニア症などの感染症が増加するリスク。人間に対し非病原性だったカンジダ・アウリスが、複数の大陸で突然治療抵抗性を示すようになったことも耐熱性と関連しているという。
4つ目は、人体免疫や衛生の低下。災害被害により衛生環境が悪化し、栄養失調等では免疫が低下する。ストレスによる免疫低下も含まれる。
【参照ページ】Over half of known human pathogenic diseases can be aggravated by climate change
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