米ジョー・バイデン大統領は8月9日、半導体法(CHIPS and Science Act)案に署名し、同法が成立した。米国の半導体の研究、開発、製造、人材育成で527億米ドル(約7兆円)の予算を組む。同法案は7月27日に連邦上院を賛成64、反対33で通過。7月28日に連邦下院を賛成243、反対187、棄権1で通過していた。
具体的には、まず、自動車や防衛システムで使用されるレガシーチップへの20億米ドルを含む製造補助金として390億米ドル(約5兆円)を用意。米国は、半導体の製造世界シェアが10%程度しかなく、シェア75%の東アジアに供給を依存していることを課題視。国内での生産体制を構築することで、経済安全保障、雇用創出、デジタル化促進、カーボンニュートラル実現等につなげる考え。半導体および関連機器の製造のための設備投資に25%の投資税額控除も行う。
その一環で、米半導体大手マイクロンは、メモリーチップ製造に400億米ドルを投資する計画を発表。建設と製造で最大4万人の新規雇用を創出する予定。この投資だけで、米国のメモリーチップ製造シェアは、今後10年間で2%未満から最大10%に拡大する見込み。クアルコムも、今後5年間で米国での半導体生産を最大50%増加させる計画を発表し、GlobalFoundriesと協働で42億米ドルを投資する考え。
補助金支給では、受取企業が、中国等の懸念国に特定の施設を建設しないことを約束させる。また、自社株買いや株主配当に使うことを防ぐルールも盛り込む。建設される施設には、「Davis-Bacon」の実勢賃金率を義務付け、労働者の所得向上にもつなげる。
また同法は、研究開発と人材開発へ132億米ドル、国際情報通信技術セキュリティと半導体サプライチェーン分野に5億米ドルの予算も組んでいる。全米科学財団(NSF)にテクノロジー・イノベーション・パートナーシップのディレクター職を設置し、半導体やAI、高度エネルギー技術、量子コンピューター技術、バイオテクノロジー等の研究開発に重点を置く。さらに、エネルギー省科学局および国立標準技術研究所(NIST)での基礎研究及び応用研究も拡大する。
研究開発では、地域経済活性化につなげるため、100億米ドルを用意し、各地域にイノベーションとテクノロジーのハブに投資。州政府や地方自治体、高等教育機関、労働組合、企業、地域ベースの組織を集め、テクノロジー、イノベーション、製造分野を開発するための地域パートナーシップを構築していく。商務省経済開発局(EDA)では、10億米ドルのRECOMPETEパイロットプログラムを通じ、低所得地域での経済開発や雇用創出を支援する。
さらにSTEM教育にも予算を用意。特に、歴史的黒人大学(HBCU)等のマイノリティ支援機関を通じた幅広い層への教育機会を創出する。他には、ワイヤレス・サプライチェーンでの米国のイノベーションを促進するため、オープンで相互運用可能な無線アクセス・ネットワークを使用する無線技術の促進と展開に15億米ドルも用意した。
同法案は、2020年にNSFの大幅に強化する法案としてスタート。その後、経済安全保障の観点から他の要素も盛り込まれ、2年越しに成立した。
【参照ページ】FACT SHEET: CHIPS and Science Act Will Lower Costs, Create Jobs, Strengthen Supply Chains, and Counter China
【参照ページ】CHIPS and Science Act of 2022
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