環境省所管の国立環境研究所物質フロー革新研究プログラムの研究チームは8月2日、日本のセメント・コンクリート産業での2050年カーボンニュートラルの達成方法を検討した結果を発表。セメントメーカー側の対策だけでなく、セメントを使う建設企業側の対策を含めて、初めてカーボンニュートラルが達成できると伝えた。学術誌「Nature Communications」にも論文として掲載された。
今回研究チームは、まず、社会経済における物質フローモデルと、素材生産・利用・解体に伴う二酸化炭素排出・吸収量を推計する物理化学モデルを組み合わせ、現状把握を実施。2019年には原材料の調達から解体に至るライフサイクル全体で、セメント・コンクリート産業は、日本全体の排出量のうち約3%に相当する34Mtを排出していることがわかった。
また、一方、コンクリート構造物の炭酸化による吸収量はその約4分の1に相当する8Mtに達することもわかった。最大の吸収源は使用中のコンクリート構造物(ビルやインフラ)で、炭酸化による全吸収量の約74%を占める。現在、セメント・コンクリートによる吸収量は、公式の排出勘定では考慮されていないが、吸収源として機能している可能性が示唆されるとした。
その上で、供給側と需要側の合計16の施策を調査し、排出削減インパクトを分析した。その結果、仮に炭酸化によるCO2吸収効果を加味したとしても、供給側の対策だけではカーボンニュートラルの達成は困難である可能性が示された。一方、素材を過剰に利用する設計の回避や、建設物の長期利用、共有化、都市機能の集約化、解体部品の再利用等の需要側での対策を早急に実施することで、2050年カーボンニュートラルの達成が見込まれることが示唆された。
(出所)国立環境研究所
今回、国立環境研究所は、セメント・コンクリート部門のカーボンニュートラル戦略は炭素回収・貯留技術(CCS)に強く依存する傾向にあることに警鐘を鳴らし、需要側でも対策することで、CCSへの依存度を大きく下げられると伝えた。
【参照ページ】セメント・コンクリート部門のカーボンニュートラル達成方法を解明
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